以前、当サイトで松尾芭蕉の「おくのほそ道」を紹介した際、私は次のように感想をまとめました。
本作は言わば「日本一優れた観光ガイド」という見方もできるのではないでしょうか。
我ながらこの見解は正しいと思っていて、読後でも読前でも構わないので、作中に登場する施設にはぜひとも訪問するべきだと考えています。
しかし、芭蕉よろしくすべての史跡・名所を一度に見て回るのは困難でしょう。
そこで、この記事では「松尾芭蕉と旅する紀行のススメ」として、奥の細道で描かれたルートを旅するポイントと、私が実際に訪れたことのある立石寺・松島などの観光名所をご紹介していきます。
「奥の細道」を旅するうえで重要なポイント
まず、奥の細道を読んだ方、あるいは芭蕉の俳句に興味を持った旅行好きの方は、一度くらい「奥の細道に出てきた名所を訪問してみたい」とお考えになったことがあるでしょう。
しかし、いざ本格的に芭蕉の旅を再現しようとすると、それはもう大変ハードなものになるということに気づかされます。
芭蕉の旅はものすごくハード
では、実際に芭蕉の旅がどのようなものであったかを解説していきましょう。
彼の移動手段や工数、訪問ルートなどをまとめたものがこちら。
移動距離 約2400㎞ ※東京-北京間が片道約2100㎞
所要日数 150日
訪問都県 13都県程度
訪問名所 25か所(おくのほそ道風景地指定名所)
芭蕉が辿ったルート(出典:大垣市HP)
各地を観光するついでに関連名所を訪問するのがベスト!
私がおすすめしたいのは、本作に関連する名所を訪れるために各地へ出向くのではなく、ある都市や地域を観光する「ついで」に名所を訪れる方法です。
例えば、金沢旅行のついでに同じ石川県の名所である那谷寺を訪問してみたり、岩手旅行のついでに平泉の名所を訪れてみたりすると、効率よく作品の世界を味わえます。
実際、芭蕉の訪れた名所は必ずしも栄えている場所にあるわけではないため、主要駅からのアクセスが悪いことも珍しくありません。
それに加えて必ずしも名所同士の距離が近くないので、いくつも訪問するには時間がかかりすぎますし、旅行の大半を移動に費やすことになってしまいます。
かといって一か所に的を絞ればボリューム不足に悩まされるでしょうし、やはり奥の細道だけで旅行を成り立たせるのは困難です。
そこで他の目的を有する旅行プランとセットにしてしまうことで、旅の充実と名所訪問を両立させることができる、というメリットがあります。
私の場合、これから説明するように伊達政宗の名所を訪問するための仙台旅行へ「奥の細道紀行」を組み込み、かなり充実した旅を楽しむことができました。
奥の細道を歩く!松尾芭蕉と旅する紀行のススメ(山形・仙台編)
さて、ここからは上記で示した「別の旅行プランに名所訪問を組み込む」という方法の例として、私が先月行った仙台旅行の際に訪問した関連名所をまとめてみました。
ただし、一部時間やルートの関係で訪問していない箇所もあります。
なお、旅行全体の内容については私の下記ブログをご覧ください。
「松島」松尾芭蕉が特に感銘を受けた日本三景
さて、まずご紹介したいのは言わずと知れた観光名所【松島】。
日本三景の一角をなし、芭蕉が感動のあまり句を詠まなかったことは有名です。
松島の景観については
「松の緑は色が濃く、枝葉が潮風に吹き曲げられて、その曲がった様子は自然と曲がったように見える。
その松島の様子は、物静かで奥ゆかしいものであって、美人の顔を美しく化粧したようである。神代の昔に、大山祇の神がなした仕業であろうか。
造化の神の働きは、いったいどんな人が筆を振るって描き、言葉で言い尽くすことができようか、いや出来はしない。」
出典:松尾芭蕉 奥の細道の足跡を訪ねて
という言葉を芭蕉本人が残しており、その感動ぶりがひしひしと伝わってきます。
一方、島の中で特に触れられているのは「雄島」という場所で、これも芭蕉が
「雄島が磯は、陸続きで(⇒実は少し離れている)海に突き出た島である。雲居禅師の別室の跡や座禅した石などがある。
また、松の木陰には俗世間を捨てて住む人たちの姿もごくまれに見えて、落穂や松笠などを燃やす煙が立ち昇る草庵で(※)心静かに住んでいて、どういうひとか分らないが、特に心引かれて立ち寄っているうちに、月が海に美しく映って、昼の眺めがまた改まった。」
出典:同上
と、これまた絶賛されています。
私が訪問した日はあいにくの天候で芭蕉が味わったほどの感動は感じられませんでしたが、晴天の日や月の夜に訪れる松島はまた別格なのかもしれません。
「瑞巌寺」芭蕉が参った伊達政宗ゆかりの寺
続いて紹介するのは、同じく松島に建立する寺社【瑞巌寺】。
こちらは伊達政宗の大規模事業によって完成した寺社で、伊達家の象徴ともいえる格を誇っています。
そのためあまり芭蕉ゆかりの寺というイメージはないかもしれませんが、彼もこの寺を参拝しており、その際に「光り輝く瑞巌寺は極楽浄土のようだ」という感想を残しています。
現代でも復元によって本堂内部は金箔での輝きを取り戻しており、また併設されている資料館にも芭蕉関係の文書や碑文が収蔵されていますので、ぜひとも一度訪問してみてください。
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