「ミステリの女王」アガサ・クリスティーの生涯や作風、おすすめ作品10選まとめ!

アガサ・クリスティー アイキャッチ 古典作家紹介
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クリスティーのオススメ作品10選!

前のページではクリスティーの生涯や作風について解説してきましたが、未読の方は「クリスティーは作品数が多すぎてどれから読んでいいのかわからない」と思われるかもしれません。

そこで、ここではクリスティー作品の幅広さを実感できる10冊のおすすめ作品を紹介します。初めてのクリスティーにも、新たなクリスティーの発見にもピッタリの作品たちです。

そして誰もいなくなった(1939年刊行 ノンシリーズ)

クリスティー作品の中でも特に人気の高い「孤島クローズドサークル」ミステリ。謎の人物によって孤島に集められた10人の男女が、過去の罪を告発され、次々と不審な死を遂げていきます。クリスティーの得意技とも言える、「マザーグース」と「見立て殺人」の組み合わせが思う存分楽しめる本作。

日本でも、さまざまなミステリ作家の手でオマージュ作品が生み出され続けている伝説的作品です。シリーズ物ではないので初めてのクリスティー作品としてもおすすめです。ぜひネタバレ前にお読みください!

オリエント急行の殺人(1934年刊行 ポアロシリーズ)

ポアロシリーズの代表作であり、こちらもぜひネタバレ前に読んでほしい一冊です。雪に閉ざされたオリエント急行の一等寝台で殺人事件が発生。たまたま乗り合わせたポアロが捜査の指揮をとることになります。

トラベルミステリであると同時にクローズドサークルミステリでもあり、列車という限られた空間にミステリと人間ドラマが詰め込まれています。寝台車の見取り図や乗客の証言など、読者も推理を楽しめる仕様になっており、エンタメ性も抜群です。

鏡は横にひび割れて(1962年刊行 ミス・マープルシリーズ)

セント・メアリ・ミード村のゴシントン・ホールに引っ越してきた、大女優マリーナ・グレッグ夫妻。夫妻が主催した慈善パーティーの最中、村の女性が殺されるという事件が起こります。パーティーの途中に大女優が見せた表情の謎と、犯行動機を独自に推理していくミス・マープル。

初登場から年を重ねてもまだまだ元気なところを見せてくれます。ミステリ要素以外にも、「時代の変化」「老い」「女の幸せ」など人生のテーマをふんだんに盛り込んだシリーズ後期の名作です。

アクロイド殺し(1926年刊行 ポアロシリーズ)

発表当時、同業のミステリ作家の間でも賛否両論の物議を醸した話題作です。とある田舎の資産家アクロイド氏が殺され、事件に関わることになった村の医師シェパード。このシェパード医師が物語の語り手であり、ポアロの相棒役も務めます。

読者が推理を進めるための情報が惜しみなく提供されていますが、真相にたどり着くのはなかなか難しい。一度読んだらすぐに読み返したくなるはずです。ちなみに初期の作品ながら、引退したポアロが登場するというのも興味深い設定です。

火曜クラブ(1932年刊行 ミス・マープルシリーズの短編集)

ミス・マープルの安楽椅子探偵としての実力を思う存分堪能できる13話の連作短編集です。
セント・メアリ・ミード村で老若男女が集い、謎めいた話を披露していく「火曜クラブ」。作家、画家、前警視総監など多彩な面々が一つずつ謎を提示していきます。

その中にひっそりとたたずむ老嬢ミス・マープル。彼女はそれぞれの話に静かに耳を傾け、誰も解けなかった事件の謎をピタリと言い当てるのです。長編はハードルが高いという方はぜひこちらからどうぞ!

パディントン発4時50分(1957年刊行 ミス・マープルシリーズ)

「列車」と「館」が登場するミステリ好きの心をくすぐる作品。ミス・マープルの友人マギリカティ夫人は、パディントン発4時50分の列車に乗車中、並走する列車内での殺人を目撃します。

ところがそれらしい物証もなく遺体も行方不明。不審に思ったミス・マープルは、優秀な家政婦のルーシーを沿線に建つ邸宅へと潜り込ませ、遺体発見と真相解明に乗り出すのでした。

潜入捜査という大胆な作戦のハラハラ感と、恋心も絡む複雑な人間ドラマで最後の最後まで読みごたえのある作品です。

秘密機関(1922年刊行 トミー&タペンスシリーズ)

貧しい幼馴染の男女コンビが、国家絡みの危険な仕事に乗り出していく、若さあふれるシリーズ長編1作目です。のちに夫婦となる二人ですが、この作品ではまだ友だち同士。若い二人が主人公ということで、ロマンスも盛り込まれた爽やかさのある作品です。

物語のテンポもよく、一見ライトテイストかと思わせる設定ですが、ミステリとしても読みごたえは十分。だまされるの覚悟で痛快な推理ゲームを楽しんでください!

パーカー・パイン登場(1934年刊行 パーカー・パインシリーズの短編集)

「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を。」そんな新聞広告を目にして事務所にやってきた人々の「不幸」を見極め、その解決策を提案していくのが、主人公パーカー・パイン。

彼は名探偵として犯人を断ずるのではなく、趣向を凝らして人々の悩みを解決していくというちょっと変わった存在です。

コミカルな雰囲気の物語が多いのですが、人間の真理をついた展開にハッとさせられることも。肩ひじ張らずに楽しめる、読後感の心地良い12編が収録された短編集です。

謎のクィン氏(1930年刊行 ハーリ・クィンシリーズの短編集)

どこからともなく現れる不思議な紳士ハーリ・クィンが主人公の12編を収録した短編集。クィンとの会話を通して、人間観察が大好きな気のいい紳士サタースウェイトが謎めいた事件の真相にたどり着いていきます。

クィンは探偵役ながら声高に推理を披露しないという珍しいスタイルのミステリで、彼のつかみどころのない不思議な存在感が、ミステリとファンタジーの融合のような世界を生み出しています。クリスティー作品の幅広さを感じさせてくれる一冊です。

春にして君を離れ(1944年刊行 ノンシリーズ)

ミステリ以外の小説も書いていたクリスティー。この作品もそうした小説の一つで、当初は別名義メアリ・ウェストマコットの作品として発表されました。

良妻賢母として家庭を守り抜き、自分の人生に満足していたジェーン。彼女は中東への一人旅の帰り道、砂漠の真ん中の宿で足止めされてしまいます。一人で過ごす時間に浮かぶのは、家族とのどこかひっかかりのある思い出ばかり。

信じてきた「幸せ」の形と現実の乖離に直面していく中年女性の心情と、リアリティ満点の世界観がどこか恐ろしさを感じさせる作品です。

まとめ

アガサ・クリスティーはその人生経験と創造力で、読者を楽しませ、後世の作家たちに影響を与える数多くの作品を遺しました。

現在私たちが国内外問わず、多彩なミステリ小説を楽しめるのは彼女の存在があってこそだと思います。

クリスティーの作品には、ミステリとしてのエンタメ性、人間ドラマ、個性的なキャラクター、イギリスの文化など実に多面的な魅力があります。

「古典ミステリ」と聞くとハードルが高いと感じるかもしれませんが、難しく考えず興味の湧いた作品を試しに手に取ってみてください。

きっとあなたなりの作品の楽しみ方を見つけられるはずです。

※物語の人物名や作品タイトルの表記は、「ハヤカワクリスティー文庫」を参考にしました。

【参考文献】

・アガサ・クリスティー99の謎(早川書房編集部 編/ハヤカワクリスティー文庫/2004年)

・アガサ・クリスティー完全攻略 決定版(霜月蒼/ハヤカワクリスティー文庫/2018年)

・アガサ・クリスティー読本(H・R・F・キーティング他 著/早川書房/1990年)

・ミステリ・ハンドブック アガサ・クリスティー(ディック・ライリー パム・マカリスター 編/森 英俊 監訳/原書房/2010年)

・イギリスのお菓子とごちそう アガサ・クリスティーの食卓(北野佐久子/二見書房/2019年)

・図説 マザーグース(藤野紀男著/河出書房新社/2007年)

【参考ウェブサイト】

・ウィキペディア内「アガサ・クリスティ」

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