1000年以上の期間にわたって日本の首都として君臨していた街、それが京都です。
現代でも日本屈指の観光スポットとして知られていますが、同時にこの地は歴史上様々な文学作品で舞台として描かれてきた「文学の街」でもあります。
そこで、この記事では「文学の中の京都を旅しよう」と題しまして、古代から近現代に至るまでに文学の世界に登場してきた京都の観光スポットをご紹介していきます!
「下鴨神社」京都の寺社でも有数の歴史を誇る名所
まずご紹介するのは、京都の寺社でもトップクラスに長い歴史を誇る「下鴨神社(賀茂御祖神社)」です。
その起源は非常に古く、なんと紀元前の時代にはすでに神社がまつられていたと言われるほどです。
すでに奈良時代以前には大規模なお祭りが催されており、やがて京都の寺社として特別な評価を受けるようになります。
平安時代にその信仰は全盛期を迎え、国や京都の守り神として貴族たちから深く尊ばれました。
そのため、『枕草子』や『源氏物語』などの王朝文学にもしばしば登場するなど、たいへん文学とのつながりが深い神社なのです。
鎌倉時代以降は平安ほどの勢力を持つには至らなくなりますが、今日でも森見登美彦の『有頂天家族』で舞台となるなど、信仰の対象および観光名所、さらには文学作品の舞台としての価値は健在ですね。
アクセス:市バス「下鴨神社前」「糺ノ森前」下車すぐ/京阪電鉄「出町柳駅」から徒歩約10分
開門時間:6:30~17:00(定休日無し)
拝観料:無料(特別拝観除く)
「野宮神社」源氏物語で美しく描写された良縁・子宝の神社
次に紹介するのは、天皇の代理として伊勢神宮に仕える斎院という女性が、伊勢へ下る前に身を清めたとされる「野宮神社」です。
上記の「野宮」という儀式に使用する場所として建立されたのが起源であり、最初にこの場所が用いられたのは平安時代の初期であったとされます。
この場所は皇女が斎院になる際には必ず訪れた場所であることから文学作品への登場機会も多く、特に『源氏物語』では第十帖にあたる「賢木」という巻で詳しく述べられています。
光源氏に恋をしていた六条御息所という女性が彼との結婚を諦め、斎院になった娘とともに伊勢へと下っていく場面で登場し、その美しい描写によって寺社の知名度が高まりました。
他にも、『徒然草』などの作品に登場しますが、南北朝時代以降は野宮制度が崩壊したため、しだいに政治の表舞台からは姿を消すようになります。
しかしながら、時の天皇によって厚く保護されたことで存続を果たし、現代では「良縁・子宝の神社」として知られるようになりました。
アクセス:市バス「野々宮」から徒歩5分/京阪電鉄「嵐山駅」から徒歩10分
開門時間:9:00~17:00(定休日なし)
拝観料:無料
「清水寺」言わずと知れた観光名所も文学スポットの一つ
次に紹介するのは、日本人から外国人まで世界中の観光客に高い人気を誇る京都屈指の観光スポット「清水寺」です。
その起源は古く、今から約1200年前にあたる奈良時代末期に建立されました。
以後、その広大な敷地や「清水の舞台」「音羽の滝」といった名所は高く評価され、『枕草子』や『源氏物語』『更級日記』など多くの作品で取り上げられてきました。
特に、『枕草子』では清水寺の縁日を「さわがしきもの」と評しており、当時からこの寺は多くの参拝客でにぎわっていたことが読み取れます。
また、中世以降にも松尾芭蕉の歌、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』、川端康成の『古都』など、数多くの文学作品に顔をのぞかせている文学スポットとしても著名ですね。
なお、2019年現在は本堂が改修工事中のため、その全貌をふたたび目撃することができるのは工事終了が予定されている2020年以降になりそうです。
アクセス:市バス・京阪バス・京都バス「五条坂」「清水道」から徒歩約10分/京阪電鉄「清水五条駅」から徒歩約25分
参拝時間:6:00~18:00前後(時期によって変動)
拝観料:400円
「金閣(鹿苑寺)」三島由紀夫の作品があまりにも有名な黄金の寺
次に紹介するのは、こちらも観光名所として非常に高い人気を誇る「金閣(鹿苑寺)」です。
この寺を建立したのは日本史の重要人物・足利義満で、荒れ果ててしまった西園寺という寺社を大改造したことによって誕生しています。
義満の死後は「鹿苑寺」という名を与えられて一定の力を誇り、応仁の乱を経て江戸時代以降も人々の信仰を集めました。
明治以降は観光地化することで寺を運営していきましたが、1950年に同寺で見習いの僧侶を務めていた林承賢という人物が火を放ちます。
これによって本堂が全焼するという悲劇に見舞われましたが、事件に衝撃を受けた三島由紀夫が描いた『金閣寺』は傑作小説との呼び声も高い作品です。
金閣も1955年には再建されたこともあり、人的被害のなかったこの放火事件は皮肉にも日本の文学界にその名を刻むこととなるのでした。
アクセス:市バス「金閣寺道」から徒歩数分
参拝時間:9:00~17:00
拝観料:400円
「嵯峨嵐山文華館(旧時雨殿)」小倉百人一首の歴史を学べる文学館
次に紹介するのは、史跡ではないものの京都を訪れた文学好きには必ず訪れてほしい「嵯峨嵐山文華館(旧時雨殿)」です。
もともとは「時雨殿」という名前で2007年に開館した文学館だったのですが、設備の大規模改修に伴って名称を変更。2018年11月より「嵯峨嵐山文華館」として再スタートしました。
この文学館で学べることといえば、なんと言っても小倉百人一首の歴史についてでしょう。
藤原定家が百人一首を選出したのはこの施設がある小倉山という地方であり、もともと小倉百人一首発祥の地として知られていました。
そのため、小倉百人一首の歴史や魅力を余すところなく味わうことができる施設となっているのです。
常設展のほかに季節の企画展なども実施されているようなので、和歌に関心がある方や百人一首を楽しんだ経験のある方にはオススメのミュージアムといえるでしょう。
アクセス:JR山陰本線「嵯峨嵐山駅」から徒歩14分
参拝時間:10:00~17:00
拝観料:900円
「源氏物語ミュージアム」源氏物語の世界を体感できる文学館
最後に紹介するのは、本記事でもたびたび名前を出してきた不朽の名作『源氏物語』に関する展示を行っている「源氏物語ミュージアム」です。
源氏物語の振興を目的として1998年に開館したこの施設は、作品のラストにあたる「宇治十帖」の舞台ともなっている宇治市に居を構えています。
もちろん内容は宇治に関するものだけでなく、『源氏物語』および当時の宮中生活全般を楽しみながら学べる展示が特徴的。
その最たるものが映像室で公開されている映画で、私が訪れた際には若者にも魅力的であるアニメ作品が上映されていました。
私もオタクの血が騒いでついつい鑑賞してしまいましたが、なかなかに面白い作品だったのでアニオタの方はぜひ見てください。
他にも数々の企画展が設けられているようなので、源氏物語ファンには外せない観光スポットでしょう。
アクセス:京阪宇治線「宇治駅」から徒歩8分
参拝時間:9:00~17:00
拝観料:600円
まとめ
ここまで、京都近郊に存在する文学スポットを解説してきました。
京都旅行は、文学好きにとっても心ときめくものなのだということをご理解いただけたら幸いです。
また、「京都の地理や雰囲気を体感する」ということは、『枕草子』や『源氏物語』といった宮中文学を楽しむ上でも欠かせない要素になってきます。
したがって、「古典文学を好きになった上で京都を楽しむ」のもいいですし、逆に「古典文学を好きになる前に京都を楽しむ」というのもまた一興でしょう。
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