老人にとっての海とは?ヘミングウェイ『老人と海』のあらすじや感想、解釈の解説!

老人と海 表紙アメリカ近現代文学
出典:Amazon
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高校生や大学生というような学生を主役に据える物語は、決して少なくありません。

しかし、その反対に「老人」というと表現が悪いかもしれませんが、ご年配の方をメインに描いた物語というのは、意外に少ないようにも感じます。

そこで、今回は「老人」の生き様を描いたヘミングウェイの傑作小説『老人の海』という作品をご紹介します。

なお、この記事では、1ページ目にあらすじや作品情報・トリビアといった解説文を、2ページ目は書評(ネタバレ多め)を掲載していますので、部分ごとに読んでいただいても大丈夫です。

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老人と海の作品情報

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者   アーネスト・ヘミングウェイ
執筆年  1952年
執筆国  アメリカ
言語   英語
ジャンル 中編小説
読解難度 かなり読みやすい
この作品は、ヘミングウェイが作家としての名声をすでに確立していた晩年に描かれた物語という特徴があります。
これまでも彼は『陽はまた昇る』『誰がために鐘は鳴る』などのヒット作を世に送り出してきましたが、本作の成功で文学者として最高峰の名誉であるノーベル文学賞を受賞するなど、現代では彼の代表作として紹介されることも多い作品です。

老人と海の簡単なあらすじ

ヘミングウェイ 釣りヘミングウェイがバハマで釣り上げたサメ(出典:Wikipedia)

キューバに住む熟練の老漁師サンチャゴは、長きにわたる不漁に悩まされていた。

彼を慕っていた助手の少年は、不運に見舞われる彼を献身的に支えつつ、共に漁へと出かける日々が続く。

そんな彼は、不漁の果てに単身で大海原へと繰り出した。

サンチャゴがいつものように糸を垂らしていると、そこに食いついたのは巨大なカジキ。

彼は熟練の手さばきでカジキと対峙し、二者の間では壮絶な我慢比べが繰り広げられるのだった。

果たして、老人はカジキという自然の強敵を打ち倒すことができるのだろうか…。

こんな人に読んでほしい

・自然と人間の戦いに興味がある

・浮ついておらず堅いストーリーの作品が読みたい

・サクッと読める古典作品をお探し

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老人と海の執筆背景や登場人物、社会的評価を解説!

この『老人と海』という作品は、現代に近しい時代に書かれたこと・内容が簡潔で短めなこともあり、作品を楽しむ上では大層な解説を要さないと考えています。

ただ、簡潔であるがゆえに多様な解釈を可能にする物語でもあり、ここでは主に解釈の幅を広げられそうな点に触れていきますね。

この作品は、メルヴィルの『白鯨』に似ているとされる

まず、この『老人と海』という作品は、本作と同じくアメリカで生み出された傑作小説『白鯨』との類似性を指摘されることでも知られています。

両方とも

・大きな魚が出現する

・魚と人間が戦う場面がある

・自然の驚異が描かれている

という点で共通しており、ヘミングウェイほどの作家が全く影響を受けていないということはないのではないか、と私も思います。
ただ、『旧約聖書』海洋学に基づいた複雑な記述で「読みづらい名作」として知られている『白鯨』とは異なる点も多く、ここに類似性を見出すかどうかは個々人の解釈次第といったところでしょうか。
個人的には、ある程度の発想を『白鯨』から拾いつつ、その先を自分なりに組み替えた作品が『老人と海』なのではないかと考えています。
ヘミングウェイはもともと釣りが好きで、彼が釣りを題材とした作品をまとめた『ヘミングウェイ釣り文学集』なるものが存在するくらいですから、パクリとまではいかないでしょう。

「老人」のモデルとなったのはキューバに実在の漁師だった?

キューバ 釣り

この作品に登場する「老人」という人物には、ヘミングウェイの思想や経験などが反映された「ヘミングウェイの分身」という側面があります。

しかし、調べていくとどうやら「老人」のモデルは彼自身ではなく、あくまでキューバに実在した名もなき漁師であるということが分かってきました。

作中で描かれている漁村はキューバがモデルになっているのですが、実際にヘミングウェイは1938年から死の直前である1960年までの約22年間をこの地で過ごしています。

そのため、ヘミングウェイはキューバ在住中に漁村に住む漁師と交流を重ね、そこからこの作品は生み出されたと考えられているのです。

ただし、このヘミングウェイがキューバに滞在した時期のことはあまり知られておらず、彼に関する伝記などが描かれる際にもこの下りはしばしば無視されてきたそう。

ここには「アメリカのイコン」としてもてはやされていたヘミングウェイと共産主義化していたキューバが結び付けられることを嫌ったアメリカ人の願いが反映されているという説もあります。

いずれにしても、語られることの少ないヘミングウェイのキューバ滞在期間が、彼の創作物に大きな影響を与えていることは間違いなさそうです。

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ノーベル文学賞を受賞したが、晩年は事故の後遺症に苦しみ最期は自殺

ヘミングウェイ 晩年晩年のヘミングウェイ(出典:Wikipedia)

本作はヘミングウェイとしても手ごたえがあったようで、彼自身何度も推敲を重ねて世に送り出した自信作であると言われています。

実際に世間での評価も上々で、彼はこの作品によってピュリッツァー賞・ノーベル文学賞を受賞するなど、文豪としての頂点に上り詰めました。

しかし、ノーベル賞を受賞した1954年、ヘミングウェイは二度の飛行機事故によって重傷を負ってしまいます。

以後、彼は事故の後遺症やこれまでの不摂生から数々の病気を併発し、これによって晩年は躁うつ病の兆しを見せていたとも。

不安定な人生を送ったヘミングウェイは1960年にアメリカへと帰国しますが、精神の動揺は収まらず1961年に猟銃によって自ら命を絶ちました。

彼の一家は遺伝的に躁うつ病を発症しやすかったと言われており、父や兄弟姉妹たちも自殺が疑われるほど。

そのスキャンダラスな最期は彼らしいといえば彼らしいのですが、遺伝的な原因もあるのかもしれませんね。

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