洋泉社解散とツイッター議論から「ブックオフや古本屋で中古本を買うことは『悪』なのか?」を考える

古本屋 イメージ 古典オピニオン
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私が「中古本購入をむしろ推奨すべき」と思う理由

冒頭の埋め込みツイートでも明らかですが、私は「中古本購入肯定派」です。

しかし、中古本購入の是非をめぐって議論になるわけですから、当然「中古本購入反対派」が少なからず存在することもまた事実でしょう。

そこで、以下では上記のデータを参考にしつつ、私が「中古本購入をむしろ推奨すべき」と思う理由について語っていきます。

「読者」そのものが減っているため、中古本でも出版界に貢献している

これはツイートでも触れていることですが、本好きが最も危惧しなければならないことは「本が読まれなくなること」であると考えています。

実際、文化庁の統計である「国語に関する調査」を見ても、本を読む量が「減っている」と答えた方は【67.3%】で、平成20年・25年度の調査と比べてもこの割合は増加傾向にあるようです。

同様の調査で1カ月に1冊も本を読まない人の割合は【47.3%】と記されており、読書好きが思っているよりもはるかに「本が読まれていない」という事実に気づかされると思います。

読書量減少のデータを鑑みると、私としては「中古本を買おうが新品本を買おうが、読書好き同士で内輪揉めしている場合ではない」としか思えません。

中古であれ本を購入している時点で、本を読む側の【53.7%】に入るわけです。

確かに中古本を購入した場合は本来支払われるはずの売り上げが出版社にもたらされず、出版業界の衰退に繋がっていると感じてしまうかもしれません。

しかし、仮にその一冊は中古本を買ったとしても、読了後にファンとなって次は新品本を買う可能性は決して低くないでしょう。

全く新品本を買わなかったとしても、中古本の読書を通じて作品を好きになれば、メディアミックスの鑑賞や口コミなどを通じて間接的に出版社の利益になるはず。

「中古本を買うことは悪」という風潮が広がってしまえば、こうした副次的な成果も上がらなくなってしまいます。

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中古本がなくなったとて、出版業界が復活するとは思えない

「中古本が出版社の利益を奪っている」という観点から、ある仮定を講じてみましょう。

それは「明日から法律で中古本の購入が禁止された場合、新品本の売り上げは向上するか」というものです。

この仮定条件で業界のことを考えたとき、明らかに中古本が新品本の利益を奪っていれば、中古本購入者を責める図式が成り立つでしょう。

しかし、あくまで私見ですが、中古本禁止は「短期的にはわからないが、長期的には確実に出版業界を衰退させる」と思います。

なぜなら、中古本はその安さから「読書への敷居を下げている」側面があるため、これを禁止してしまうと新たな読者の誕生を阻害してしまうからです。

上記の読者数においても、「本が好きで好きでたまらない」というよりは、「娯楽や勉強の一環で『本』というメディアを選択している」という割合は少なくないでしょう。

そうなると、「中古本がないなら他のメディアで済ませるので結構です」と言われてしまう可能性が高く、やがてメディア競争に敗れ去ってしまいます。

読書ファンが減少し続けているのは、消費者の選択肢が広がり続けているから。

新規参入のハードルを上げてしまうのは、あまりにも愚かとしか言いようがありません。

ビジネスとしての「出版」を考えるのは業界側の仕事

「中古本否定派」の主張を見ていくと、「読者はもっと出版業界の事情を忖度して消費行動をするべきだ」という論調を感じます。

私も物書きのはしくれなので、ついこう言ってしまいたくなる気持ちはわかります。

がしかし、法律で規制されているわけでもない以上は読者が最も安価に本を手に入れられる行動をとるのは自然ですし、それを出版業界視点で責めるのはお門違い。

「ビジネスモデル」を考えてそうした読者を利益貢献に誘導するのは業界側の仕事で、責められるべきは売り上げを落とし続けて打開策を見いだせていない彼らなのではないでしょうか。

第一、ゲームや音楽・映画などの他ジャンルも中古市場と新品市場が存在するわけですが、紆余曲折を経て電子化やサブスクの普及でなんとか両立を図っています。

とくにゲームのダウンロード販売や音楽・映画のサブスクはすっかり普及したと思いますし、ここでは現代に合わせたモデルチェンジが成し遂げられているのです。

出版業界も電子化やサブスクのシステムが全く導入されていないわけではないものの、素人目に見ても明らかに努力不足感は否めません。

実際、この記事でも触れているように、Amazonの読み放題サービス「Kindle Unlimited」に参入している出版社はごくわずか。

中古本を責めるのであれば、まず出来ることをやりつくしてから問題提起するべきです。

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「読書」のすべてが衰退しているわけではない

ここまで、「出版不況」と「読者視点」から「中古本を買うこと」の是非について検討してきました。

我ながら内容をまとめていて「出版不況」の深刻さに言葉を失ってしまったのですが、なにも「読書」、もっと広げて言えば「文字を読むこと」に関するすべてが衰退しているわけではありません

例えば、Hon.jpの記事によると、電子出版市場は前年度比12.2%増、電子書籍市場は同26.1%の急増と、拡大の一途をたどっています。

ところが、冒頭で触れた洋泉社は読み放題事業への参入どころか電子書籍化もほとんどなされておらず、言ってしまえば「伸びしろを残したままの解散」となってしまいました。

他にも、経営改革に積極的な出版社・書店などは、独自の生存戦略で令和の時代を生き抜こうと奔走しています。

業界としては衰退しつつありますが、「創意工夫し時流に乗れた会社こそが生き残る」という、資本主義経済本来の形に帰結しているともいえるでしょう。

もっとも、一つだけハッキリと言えることは「出版取次分野は近いうちに立ちいかなくなる」ということ。

古来より出版システムの根幹を支えてきた取次ですが、現代においてもはやその存在意義は薄れつつあります。

加えて、取次業への「顔色伺い」の結果として本の電子化が進まないという側面もあり、出版業界が再生するためには「取次ビジネスの完全崩壊」が必要かもしれません。

もちろん業界に与えるメリットも多いのですが、取次ビジネスの崩壊は皮肉にも出版業界を前進させることに繋がるように思えます。

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