「正史」と「演義」は何が違う?『三国志』のあらすじや感想、内容の解説!

吉川三国志 表紙中国古代文学
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男子の心をくすぐる物語として著名な『三国志』。

その名を知らないという方は少ないかと思われますが、同じ『三国志』でも『正史三国志』『三国志演義』という二つの文学が存在することをご存知ですか?

2019年7月9日より東京国立博物館で「三国志展」が開催されるということもありますので、この記事では『三国志』という一大作品の内容を解説していきたいと思います。

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正史三国志・三国志演義の作品情報

まず初めに、この項では『三国志』の基本的な情報を整理してみました。

ここを読んでいただくと、勘のいい方には両者の違いを見分けることができるかもしれませんね。

三国志(正史)
作者   不詳(陳寿撰)
執筆年  不詳(西晋代)
執筆国  中国(西晋)
言語   中国語
ジャンル 歴史書(二十四史)
難易度  かなり読みにくい
三国志演戯
作者   不詳
執筆年  不詳(明代)
執筆国  中国(明)
言語   中国語
ジャンル 時代小説
難易度  やや読みにくい

正史三国志・三国志演義の簡単なあらすじ

後漢末期——。

長く続いた漢王朝も腐敗が目立ち始め、世はふたたび戦乱の色彩を帯びるようになっていた。

そんな最中、黄色い頭巾をトレードマークにした太平教の信者らが「黄巾の乱」を引き起こし、乱そのものは制圧されるものの漢王朝は衰退の一途を辿るように。

こうした中央の時勢に呼応するかのように、中国大陸の各地方から有力な豪族が出現。群雄割拠の時代が幕を開けた。

やがて、その中でも曹操を首領とする「魏」、孫堅を首領とする「呉」、劉備を首領とする「蜀」の三国が覇権を争うようになり、世はいつしか「三国時代」という名称が与えられた。

数多くの英雄が生き死にを繰り返した乱世を制するのは、果たしてどの国になるのであろうか。

こんな人に読んでほしい

・三国志が題材になった作品が好き

・日本の戦国時代に興味がある

・野望を追い求める漢の生き様を知りたい

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正史三国志・三国志演義の内容や時代背景の解説

桃園の誓い桃園の誓い(出典:Wikipedia)

次に、この『三国志』という作品についての紹介と読み方などの解説を加えていきます。

そもそも中国の立派な歴史書であった本作が、どうして今なお日本の地で愛されているのか。

皆さんも考えながら読み進めていただくと幸いです。

中国の二十四史に数えられた「正史」が『三国志』

まず、上の表にも書いてあるように、いわゆる『正史三国志』と呼ばれる作品は中国に伝わる正当な歴史書という立場を持ち合わせています。

つまり、この作品は小説や物語といったジャンルの代物ではなく、日本でいえば『古事記』や『日本書紀』のような性質の作品です。

そのため、中国の正当な歴史書をひとまとめにした「二十四史」という歴史書群の一冊に換算されているほか、本作の「魏志 倭人伝」部分には邪馬台国をめぐる記述が存在することで教科書にも掲載されていたりします。

上記の「魏志」が30巻で、ほかには「蜀志」15巻および「呉志」20巻の計65巻から成立する長編の歴史書であり、記載についても史実に基づいたものが多いことから研究の領域においても高く評価されているのです。

もっとも、中国の歴史書は基本的に「前の王朝が滅びてから記述される」という性質をもっており、書かれた時代の国家を正当化するために歴史を改ざんしていることも珍しくありません。

また、数字の面などからもやや誇張気味の個所が目立つため、ある種の物語的な側面がないとは言い切れないでしょう。

上記の歴史書を時代小説として再構成したのが『三国志演義』

ここまで見てきたように、正史としての『三国志』はあくまで歴史書という言わば「お堅い」書籍でありました。

しかし、正史のレベルでも波乱やロマンにとんだ物語が展開されており、後世においても読み継がれる作品になっていたのです。

そのため、明の時代(日本でいえば室町時代ごろ)には正史をベースにした講談や創作が流行っており、その最高傑作として称されたものが『三国志演義』ということになります。

この作品は正史をベースにしていながらも様々な個所が物語として面白くなるよう創作されており、お堅い歴史書が娯楽作品に昇華されていました。

その証拠に、皆さんのよく知る「関羽」や「曹操」といった乱世の英雄にまつわる逸話やイメージは大半がこの『三国志演義』由来になっているほどです。

つまり、現代流にわかりやすく『三国志』と『三国志演義』をまとめると

歴史書の『三国志』をテーマに「二次創作小説」を書いた結果、めっちゃ人気になっていつの間にか本家を超える知名度を獲得した作品が『三国志演義』

と表現できるのではないでしょうか。

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近年は『三国志演義』の知名度が圧倒的

単に中国の歴史書および時代小説でしかなかった両作ですが、歴史上日本と中国の縁は非常に深く、どちらも近代以前に日本へと伝来しています。

『正史』については具体的な伝来期こそ定かではありませんが、遅くとも奈良時代までには伝わっていたようです。

その後も中国文化を尊重する時代がしばらく続いていくため、古代から明治時代ごろまで実に1000年近く読み継がれていくことになりました。

しかし、昭和期に入ると歴史作家として大ヒットを記録した吉川英治の『三国志』が大流行。

この作品は『正史』ではなく『演義』をベースにした物語であったため、以後日本において『三国志』といえば『演義』と考えられるようになっていったのです。

この影響もあって、先ほども触れたように我々がよく知る『三国志』は、そのほとんどが『演義』に基づいた知識と言っても過言ではないかもしれません。

ちなみに、ネット上で「むむむ…」→「何がむむむだ」などの点がしばしばネタにされる横山光輝の漫画『三国志』も、吉川三国志をもとにした作品として知られています。

もっとも、昭和後期からは『正史』の存在もクローズアップされはじめ、現代の創作などでは『正史』ベースの設定が採用されることも珍しくはなくなってきましたね。

どちらにも良い点があるため、目的に合った方を読むべき

ここまでの内容を見ると、「二つあるうちのどっちを読んだらいいの?」という疑問が浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。

結論から言えば、

・初見の方や物語を楽しみたい方は『演義』

・研究目的や三国志にハマった方は『正史』

をお読みになるのがよいのではないかと思います。

まず、両者を比べてみると、初めから小説として「物語の面白さ」を追及している分『演義』のほうが読んでいて楽しいという事実があります。

そのため、「三国志の世界に触れてみたい!」という方や、「物語を楽しみたい!」という方は『演義』から読み始めるべきでしょう。

一方で、『正史』は歴史書として書き残されている作品です。物語としての完成度は『演義』に劣るところがありますが、「歴史」を知る上ではこちらのほうが高い価値を有していることになります。

また、『演義』を読んでから『正史』に目を通すと、これまで認識していた人物や出来事に対する印象が大きく変わることも。

したがって、「論文やレポートで『三国時代』の歴史を描きたい!」という方や、「三国志が好きになったのでもっとよく知りたい!」という方は『正史』をお読みになるといいでしょう。

もちろん、「私は『正史』から読み始めたいんだ!」という方は『正史』から入っても問題ありませんし、研究の分野やスタイルによっては『演義』のほうが参考資料として高い価値を有することもあります。

そのため、「三国志を読む動機」というものを自分の中で整理すると、どちらから手を出すべきかが見えてくるのではないでしょうか。

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