『赤毛のアン』のあらすじや感想、モデル・時代背景などの解説!大人から子供まで楽しめる児童文学

赤毛のアン アイキャッチ 諸地域の近現代文学
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赤毛のアンの感想(ネタバレあり)

ここからは、本作に関する解釈や考察を含めた感想を述べていきたいと思います。

なお、記事の構成上多くのネタバレを含みますので、その点はご了承ください。

「普通の生活」を送れることの尊さと厳しさを教えてくれる

アンの物語では、劇的な冒険やファンタジーなどない、「ごく普通の日常」を描いています。

私はこの物語を通して、「普通の暮らしの尊さと厳しさ」について、改めて深く考えさせられました。

大人になってみて気がついたのですが、「普通の生活」を送れるということは、本当にすごいことで、ありがたいことです。

この物語をそうした視点で読んでみると、あらゆる場面がより色づいて見えてきます。

物語の冒頭、マシューに連れられてグリーンゲイブルズに向かう途中、地元の人々にとっては当たり前の光景に、アンが感激するというシーンがあります。

ここにはわかりやすく、「当たり前の風景のすばらしさ」が表現されていて、マシューとアンの温度差によって、その点が強調されています。

このほか、グリーンゲイブルズでの暮らしや学校生活、マリラやマシュー、腹心の友ダイアナとのやり取りからも、何気ない日常に対するアンの真剣さと感謝を感じ取ることができます。

その後成長したアンは、身近な人の老いや死によって、当たり前だった環境や日々が揺るがされる事態に直面します。生活の糧や住む場所という、日常を送るための基盤を、自ら努力して確保していくことになるのです。

終盤のアンの選択は、10代の女の子にとって厳しすぎるのではないかという気もします。しかし、平穏な日常を送るためには、そうした選択を迫られることもあるという、人生の厳しい側面も伝えているように思いました。

アンの暮らしを彩るお菓子たちの描写が見事!

日常を描き出している物語で欠かせないもの。それはズバリ「食べ物」です。

日常的に食べている物には、登場人物のキャラクターや暮らしぶりが反映されます。

『赤毛のアン』にももちろんその要素はたっぷり。再現して食べてみたくなる料理(主に焼き菓子)がたくさん登場し、モンゴメリのお孫さんによるクックブックも刊行されています。

私が特に気に入っている食べ物の描写は、アンがダイアナに牧師夫妻をお茶に招くことを自慢するシーンで登場します。

アンがお茶会で出す食べ物を挙げていくのですが、このメニューが並んでいるお茶のテーブルを想像するだけで、ウキウキしてきます。美味しい物に関する感覚は共感しやすいので、アンと一緒にお茶会を楽しみにしている気分になれました。

ほかにもピクニックで食べさせてもらうアイスクリーム、初めて手づくりしてお客様に出した大失敗のレイヤーケーキなど、日々のイベントと食べ物が結びついていて、「食べること」の喜びとワクワクを思い出させてくれます。

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大人になって気がついた主人公の魅力

『赤毛のアン』は読むタイミングによっても、受ける印象が大きく変わる物語だと思います。

何を隠そう私自身がそれを体験した一人。子供のころに読んだときには、あまりピンとこなかったのです。

全体的に女の子っぽい話であったことが、当時の私の好みには合いませんでした。また、アンのキャラクターも子供心に大げさに感じられて、単なる「物語の中の女の子」として受け止めるにとどまってしまったのかもしれません。

しかし、大人になって再読すると、子供のころとはまったく違った印象を受けます。

自分自身も人生いろいろと経験してきたためなのか、アンの背負う切なさや、喜びに出会ったときの爆発するようなうれしい気持ちというものに、素直に共感できるようになっていました。

そしてそのすべてをありのままに表現できるアンを、素直にうらやましくも思えました。

また、マリラやマシューなど、アンを見守る大人の目線に近い感覚を持って読んでいることにも気づきました。子供なりに自分の世界を精一杯生きている姿に、どうにか元気に生きていってほしいと応援したくなってくるのです。

思えば子供のころに抱いた違和感には、年の近いアンに対する嫉妬心も含まれていたのかもしれません。

大人になると、アンと自分の間にちょうどよい距離ができて、アンを受け入れやすくなるのかなと思います。

同じように違和感が残ったまま大人になってしまった方には、ぜひ再読をおすすめしたいですし、「もう大人だし、今更・・・」と思っている方にもぜひ手に取っていただきたいですね。

【参考文献】
・赤毛のアン 新装版(村岡花子訳/新潮文庫/2008年)
・赤毛のアン 新装版(村岡花子訳/講談社青い鳥文庫/2008年)
・アンのゆりかご 村岡花子の生涯(村岡恵理著/新潮文庫/2011年)
・赤毛のアン 注釈版(山本史郎訳/原書房/2014年)
・100分de名著 モンゴメリ 赤毛のアン(茂木健一郎著/NHK出版/2018年)
・図説 赤毛のアン(奥田実紀著/河出書房新社/2013年)
・L.M.モンゴメリの「赤毛のアン」クックブック 料理で楽しむ物語の世界(岡本千晶訳/原書房/2018年)

【参考ウェブサイト】
・ウィキペディア内「プリンスエドワード島」

【翻訳比較用の資料】
・赤毛のアン 新装版(村岡花子訳/新潮文庫/2008年)
・赤毛のアン 新装版(村岡花子訳/講談社青い鳥文庫/2008年)
・赤毛のアン 注釈版(山本史郎訳/原書房/2014年)
・新訳 赤毛のアン 完全版(上・下)(河合祥一郎訳/角川つばさ文庫/2014年)
・完訳 赤毛のアン シリーズ1 赤毛のアン(掛川恭子訳/講談社/1990年)

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