森鴎外『高瀬舟』のあらすじや感想、主題の解説!「足るを知る」ことと「安楽死」を描いた小説

高瀬舟 アイキャッチ日本文学
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さて、今回は日本の近代作家・森鴎外の『高瀬舟』について解説をしたいと思います。この作品、「とにかく硬くて地味」なイメージではないでしょうか。

『高瀬舟』というタイトルは「え?なんの船?」って感じですし、作者の森鴎外についても、「なんか小難しそう」「そもそもその漢字、なんて読むんだよ」と、私自身思ってました。

しかし、それは「食わず嫌い」

もし、この作品を読んでいない理由が「なんとなく難しそう」だったら、本当にもったいないです。

確かに派手さはありませんが、その一方でとても読みやすく、面白い。そして、読み終わったあとには、自然と「人生の見方が少し深く」なり、何かに悩んでいる人は「悩みとうまく付き合える」ようになることでしょう。

「最初は不安だったけど、食べたら美味しかった!」そんな思いをぜひ皆さんにも味わって欲しいと思います。

なお、ネタバレには注意してください。

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高瀬舟の作品紹介

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者森鴎外
執筆年1916年
執筆国日本
言語日本語
ジャンル歴史小説・短編小説
読解難度読みやすい
電子書籍化
青空文庫
Kindle Unlimited読み放題

この小説はとても短く、私の手元にある新潮文庫版では本文がなんとわずか16ページ!

通学・通勤で電車に揺られている間や、ファミレスでの一人ランチ中の待ち時間などでも簡単に読めてしまいます。

おまけに会話文が多く、話はサクサク進み、表現も分かりやすいと三拍子そろっています。古典や文学の入門としてはまさに「もってこい」の一冊。

また、本作は電子化が進んでおり、

・Kindle端末
・青空文庫
・Kindle Unlimited読み放題

のすべてで作品を楽しむことができます。

「Kindle端末×青空文庫×Kindle Unlimited読み放題」はそれぞれ非常に相性がよく、古典好きならすべて利用すると超快適な読書ライフを送れます!

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『高瀬舟』の簡単なあらすじ

江戸時代の後期、京都を舞台にした物語。

一人の悲しい罪人「喜助(きすけ)」と彼を護送する役人「庄兵衛(しょうべえ)」とのやり取りで物語は進んでいきます。

「高瀬舟」とは京都から罪人を島流しにする際、その護送のための船のこと。当初、庄兵衛は島流しにされ哀れであるはずの喜助が、なにやらとても楽しそうに見えるのを不審に思い、思わず喜助に話しかけました。

すると、喜助からは驚きの答えが!喜助の言葉に庄兵衛は大いに動揺し、また、まるで偉いお坊さんから「喝!」を入れられたように、打ちのめされます。

庄兵衛は喜助との関わりにより、人生の喜びや悲しみ、理想の生き方や死に方など、深く難しい問題に目を見開かされたのでした。

こんな人に読んでほしい

・手軽に古典の世界を味わいたい!
・人生訓を探している
・意外な結末が好きだ
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高瀬舟の作者、二大テーマについての解説

ここからは、この作品に関する背景や読み方などの解説を行っていきます。

「高瀬舟」は大正時代に書かれた小説で、お話の舞台は江戸時代とされています。ところで、多くの古典がそうであるように、この作品も作者森鴎外の人生や考え方が、色濃く反映されています。

作者・森鴎外は医者でもあり文学者でもある

早速ですが、そもそも作者の森鴎外とは何者でしょうか。

森鴎外 写真森鴎外(出典:Wikipedia)

彼は、今で言う島根県津和野の出身で、もともとは津和野藩を治めた亀井家の典医、つまりお殿様のお抱えドクターを勤めた家に生まれました。

彼の経歴を書き出すと、

・文学博士
・(現在の)東京大学医学部卒業
・医学博士・陸軍軍医総監
・帝室博物館(現在の東京国立博物館)の総長
・帝国美術院(現在の日本芸術院)の初代院長

…立派すぎます。一言でまとめると、

「東大を出たお医者サマの文豪で、軍隊のトップを務めおまけに芸術を統括する大ボス」

文句なしに超エリートですね。

ちなみに、「科学」という外来語を訳し、概念そのものを誕生させた人物も彼の親戚である「西周(にしあまね)」という学者。

西周 写真西周(出典:Wikipedia)

「科学」や「哲学」、「芸術」などという言葉も西周の翻訳によるものです。

彼がいなければ、日本の学問は成立しなかったという人もいます。受験勉強もここまで難しくならなかったかもしれませんね。

以上のように、経歴や親戚関係からまるで雲の上の存在のようにも思える「超エリート」森鴎外も、実は人並みにちょっとしたことで悩んだり、迷ったりしています。

そして、その悩みというのも「子供の病気が心配」とか「母親と奥さんとの間で板挟み」といった、割と庶民的なもの。

この悩みや迷いが作品の多くに影響しているといっても過言ではありません。そのあたりもこの作品の見どころの一つと言えるでしょう。

「足るを知る」というテーマには老子の教えが反映されている

本作には2つの大きなテーマがあり、1つは「足るを知る」、もう一つは「安楽死について」である言われています。

まず最初に、「足るを知る」というテーマの根本に迫っていきましょう。

実は、この考え方は中国の思想家「老子(ろうし)」の考え方によるものです。

老子 肖像画老子(出典:Wikipedia)

鴎外自身はこのことについてはっきり述べていませんが、まず、間違いないでしょう。

「老子」とは紀元前中国の思想家です。この人物については「実在してるの?」とか、「複数いるんじゃね?」など専門家の間では諸説あるようです。が、話がややこしくなるので一応「老子」という人がいた、ということにして進めていきます。

老子の思想は後の中国や日本をはじめ世界中に大きな影響をもたらしています。ちなみに彼の著したとされる書物も「老子」と呼びます。なので「『老子』を書いた老子によれば・・・」と、読者をちょっとした混乱に引き込む、古いながらアバンギャルドな思想家です。

老子の思想は、老荘思想という仏教や儒教と並ぶ東洋哲学のひとつとして、あるいは、本来の老子の思想とは少し形を変えた道教という一つの宗教となったりして広まりました。

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さて、それでは「足るを知る」について、老子先生に教えてもらいましょう。

老子の書いた『老子』によれば、

「足るを知るとは、何かを得てそれに満足することではない。あるがままの現実に、つねに満足することなのである。」

(中国の思想Ⅵ『老子・列子』徳間書店より)

と、あります。

「あるが~♪、ままの~♪」なんて『アナ雪』の歌っぽい感じもありますが、うーん、分かったような分からないような。

しかし、作品を読んでいくとこの考えがしっかりと反映されていることに気づくでしょう。

もう一つのテーマである「安楽死」とはそもそも何か?

『高瀬舟』の二大テーマの一つ「足るを知る」について、見てきました。ここからはもう一つのテーマ「安楽死」について見ていきたいと思います。

突然ですが、みなさん生きてますか?おっと、石を投げないでください!

生きてますよね、知ってます知ってます!

ただ、ちょっとイヤなことを言ってしまいますが、生きている人はいつかきっと死んでしまいます。

あまり考えたくないですが、どうせ死ぬなら事故や病気で苦しむより、できるだけ穏やかで楽に死にたい、という方、少なくないのではないでしょうか。

ちょっとザックリとした解説ですが、これが「安楽死」という考え方に繋がります。

医学的に言うと安楽死には「積極的安楽死」「消極的安楽死」の二通りが存在し、前者は「患者の命を終わらせる目的で手を加えること」、後者は「患者の命を終わらせる目的で治療を止めること」と定義されており、その賛否を巡ってはさまざまな意見が交わされているのです。

専門サイトではないのでさらなる解説はしませんが、もっと詳しく知りたい!という方は日本臨床心理学会の解説ページをご覧ください。

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