小説『君たちはどう生きるか』のあらすじや感想・作者の解説!原作として漫画化され大ヒットした教養書

君たちはどう生きるか アイキャッチ日本文学
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「2018年に最も読まれた本」として書店に並んだ漫画『君たちはどう生きるか』

新書として大ヒットした作品ですが、この本には原作があることをご存じでしょうか?

その作品とは、今から約80年前の昭和12年(1937年)に出版された同名の小説『君たちはどう生きるか』です。

子ども向けの作品なので読みやすい一方、大人が読んでも多くの学びを得られる優れた一冊。

今回の記事では、作品に隠された奥深い部分を中心に解説していきます。

なお、1ページ目にあらすじや作品情報・トリビアといった解説文を、2ページ目は書評(ネタバレ多め)を掲載していますので、部分ごとに読んでいただいても大丈夫です。

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『君たちはどう生きるか』の作品情報

作者吉野源三郎
執筆年1937年
執筆国日本
言語日本語
ジャンル児童文学
読解難度とても読みやすい
電子書籍化×
青空文庫×
Kindle Unlimited読み放題×

この本は「日本少国民文庫」という、子どもたちに向けて書かれたシリーズものの最終刊として企画されました。

そのため、大変読みやすく、また親しみやすい文章となっています。

一方で内容はとても奥深く、大人が読んでも十分に読み応えがあるでしょう。むしろ、読者の人生経験が深いほど、得られる気づきも多い。

岩波文庫にも収められていますが、シリーズのなかでは最も読みやすい作品といってよいでしょう。

『君たちはどう生きるか』の簡単なあらすじ

15歳(旧制中学2年)になる本田潤一君は、ひょんなことから叔父さん「コペル君」とあだ名をつけられてしまいました。

このコペル君は、成績優秀でスポーツもこなすクラスの人気者。とっても素直で元気のいい男の子ですが、少しいたずら好きなところがたまにキズ。

コペル君は、学校の友達との間で様々な出来事を経験します。発見があったり、悩んだり、苦しくて涙したり。

そんなコペル君を叔父さんは温かく見守り、彼のためにノートにメッセージを記すことで、そっとアドバイスを残すのでした。

こんな人に読んでほしい

・自分の生き方を深く考えてみたい

・子育ての参考になる本を探している

・とにかく岩波文庫を一冊読んでみたい

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『君たちはどう生きるか』の作者や構成、時代背景の解説!

本作は子ども向けの作品なので、話の筋や内容を理解するのは難しくありません。

しかし、その易しさの裏側には「優秀な作者の願い」が隠されているのです。

作者・吉野源三郎は多芸多才な人物だった

作者・吉野源三郎は、1899年(明治32年)生まれの児童文学者・編集者。

肩書きは幅広く、

・評論家
・翻訳家
・ジャーナリスト
・反戦運動家

と呼ばれることもあります。

戦後も一貫して、進歩主義・自由主義的な立場から日米安保など様々な政治問題へ積極的に言及。

一言で表わせば、彼は「モノ申す文学者」といえます。

しかし、活動の熱心さとは裏腹に性格は大変に温厚だったようで、各方面に理解者がおり、多くの人に慕われてもいました。

東京大学(当時は東京帝国大学)で哲学を学び、卒業後は陸軍に入隊するという多彩な経歴も持っています。

東京大学

非常に幅広い経験に裏打ちされた主張は、非常に説得力に富み、誰もが彼に一目置かざるを得ませんでした。

「岩波文庫」でおなじみの岩波書店に入社し、現在でも学生はレポートや卒論などで大変お世話になる(私もそうでした)岩波新書を創刊したのも彼。

政治学者・丸山真男や哲学者・鶴見俊輔、さらには現在も子供から大人まで幅広く人気を集める映画監督・宮崎駿など、彼を崇敬する文化人は少なくありません。

ちなみに、鶴見俊輔は本作を絶賛しており「日本人の書いた最も独創的な哲学書の一つ」と評しています。

彼も若い時にこの書を手に取り、多くの洞察を得たと著作のあちこちに記しています。

日本を代表する偉大な哲学者をして、「最も独創的な哲学書」と言わしめた本作。読者層の広さをうかがわせるエピソードです。

コペル君と叔父さんのハートフルなやりとり

本作は、子供たちの道徳・教養教育を目的に執筆されました。まさに『君たちはどう生きるか』というタイトルのとおり。

このような狙いで書かれた文章は、どうしても説教臭く、正しさの押し付けになりがち。

しかし、本作には説教臭さや押し付けといった雰囲気を一切感じることがありません。

それは、独特の作品構成が原因です。

本作は全部で10章からなりますが、そのうち6つの章ではある工夫が施されています。章尾に「おじさんからのノート」という形で、叔父さんからコペル君へのアドバイスが記されているのです。

物語は、旧制中学に通う15歳のコペル君の学校生活を中心に進んでいきます。

彼は学校生活の中で色々と壁にぶち当たり、悩みます。感受性豊かな思春期ならではの心理でしょう。

そのうえで、こうした悩みや、そこから得た気づきを叔父さんに話します。

普通の大人なら、思春期丸出しの子どもの悩みなど「下らない」と思いながら適当に返してしまうでしょう。

しかし、本作に登場する叔父さんは一味違います。

叔父さんはコペル君の考えを真正面から受け止め、本当に親身になって応えてくれるのです。

叔父さんは大学を卒業したばかりですが、言うまでもなく彼の言葉には経験豊富な作者の深い洞察が裏打ちされています。

親身な叔父さんの物腰と作者・吉野源三郎の豊富な知識。

この二つが相まって、「君たちはどう生きるか」というハードな問いを、一般人や子どもたちにも飲み込みやすく説明してくれる作品なのです。

軍国主義に対抗するための作品として執筆された一面も

この作品が発表されたのは1937年(昭和12年)。4年後の1941年(昭和16年)には、日本も真珠湾攻撃により第二次世界大戦に参戦することになります。

真珠湾攻撃 様子真珠湾攻撃(出典:Wikipedia)

1945年(昭和20年)の敗戦に向かい、泥沼にはまっていく時代でした。

軍国主義が広がる中、とても息苦しく、「お国のため」に個人の幸せや自由が抑圧されていた一面も。

彼はそのような空気を良しとせず、なんとか言論により軍国主義に抵抗したいと考えていました。

ただ、時代は大変に厳しかった。

軍国主義に反対し、自由を称賛するような行為は弾圧・投獄の対象にもなりました。

そこで、吉野源三郎を含めた反戦思考の知識人たちは

「自由な執筆は困難」ながら「まだ少年少女に訴える余地は残って」おり、せめて次の時代を担う子どもたちだけでも偏狭な考えを乗り越え、自由な文化のあることを感じて欲しい

と、強く願いました。

このような思いから「日本少国民文庫」という全16巻からなるシリーズを発表することを決めた作者たち。

『君たちはどう生きるか』はこのシリーズの最終巻をかざる作品です。

本作は、軍国主義の流れになんとか抗いたい、という悲痛な思いから生み出されたものなのです。

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