『源氏物語』のあらすじや感想、読み方解説!女性たちが織り成す古典の最高傑作

源氏物語 アイキャッチ 日本文学
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日本の古典文学を語るうえで外すことのできない作品。これが『源氏物語』でしょう。

もはや今さら語るまでもない歴史的傑作ですが、その長さや読みづらさから古典の授業以外で読んだことがないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では比較的最近本作を読破した私が、『源氏物語』という作品の魅力や読み方を存分に語っていきたいと思います。

なお、この記事では、1ページ目にあらすじや作品情報・トリビアといった解説文を、2ページ目は書評(ネタバレ多め)を掲載していますので、部分ごとに読んでいただいても大丈夫です。

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源氏物語の基本情報

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者 紫式部
執筆年 11世紀初頭?
執筆国 日本
言語 日本語(古文)
ジャンル 長編小説・恋愛小説・歌物語
読解難度 読みにくい
電子書籍化
青空文庫 △(与謝野晶子訳のみ)
Kindle Unlimited読み放題 ×
この作品に関しては後世に与えた影響があまりにも大きく、中世から現代を通じて無数の注釈書や翻訳書、研究書が出版されているという特徴があります。
そのため、『源氏物語』のことを知ろうと思えばそれはそれは豊富な文献が残されているため、古代の作品ながら非常に研究が容易な作品かもしれません。
しかし、そうした研究が多くなされるにもかかわらず、いまだに多数の謎を残すミステリアスな作品でもあります。
その謎については、またおいおい解説していきます。

源氏物語の簡単なあらすじ

源氏物語画帖源氏物語「若紫」の一場面(出典:Wikipedia)

昔々、宮廷において特に帝の寵愛を受けた女性がいた。

その名を桐壷といい、とりたてて優れた後ろ盾こそないものの帝の愛を独占していた。

しかし、そんな彼女が後宮の女性たちに恨まれないはずもなく、しだいに気を病んでいくようになる。

彼女は、やがて光り輝く才気あふれた男児を産み落とした。

この人物こそが光源氏であり、将来は華々しく成長する姿がありありと想起された。

ところが、後宮の嫉妬に耐えかねた桐壷は体調を崩していき、源氏3歳の年にこの世を去ってしまう。

母を失った源治であったが、遺児となった彼は帝のこの上ない寵愛を受けて他に例のないほど才気あふれた青年となった。

源氏と彼を取り巻く女性たちの物語は、ここに始まるのである。

こんな人に読んでほしい

・奥ゆかしい恋愛小説が好き

・和歌や長編の物語に抵抗がない

・「源氏物語はただのラノベ」だと思っている

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源氏物語の内容や読み方、登場人物の解説

この『源氏物語』という作品は、古典の中でもとにかく読み始める前の予備知識古典理解度がものを言う物語でもあります。

そのため、ここからは「源氏物語を読む」ということに焦点を当て、その前提となる内容を語っていくこととしましょう。

三部構成の長編恋愛小説だが、謎も非常に多い

まず、この源氏物語という小説は一般に三部構成の恋愛小説であると考えられることが多いです。

詳細な内容についてはネタバレになってしまうので避けますが、源氏の栄華を描いた第一部・源氏の陰りを描いた第二部・宇治の姫たちを描いた第三部と別れており、作者は当時宮中に仕えていた紫式部であるとされています。

紫式部 肖像画紫式部(出典:Wikipedia)

このあたりについては常識としてご存知の方も多いと思いますが、本作はこうした点ですらも確定的な事実とはいえず、非常に謎の多い作品として知られているのです。

まず、作者も紫式部というのが定説ではあるものの、「紫式部が仕えていた藤原家ではなく源氏を高く評価している」ことから源氏関係の人物が作者であるという説から、一部分は別の作者によって描かれたという説まで存在します。

さらに、全五十四帖が現存している物語のうち、一帖の「桐壷」と二帖の「帚木」の間にもう一帖が挿入されていて然るべき、とあの藤原定家が語っているほか、実は全六十帖であるという説が存在するなど、全体の巻数すらも確定はしていません。

他にも様々な項に異説が唱えられており、「実は三部構成でもない」「作品の『テーマ』という概念は存在しない」「執筆順は桐壷が最初ではない」など、研究が盛んにおこなわれていてかつ明確な物語の概要が分かっていないことから、現代でも様々な新説が登場している状況です。

普通に娯楽作品として読む分にはこれらのことを気にしなくても大丈夫ですが、もし気になる方は非常によくできているWikipediaの記事に目を通してみるとよいでしょう。

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平安時代の文化・習俗や古語の読解など、古典常識が必須

古典の授業などでこの作品を読んで「難しい!」と感じた方は多いかもしれません。

この点に関しては、ハッキリ言って現代語訳の作品を読んでもつきまとう大きな問題です。

私は与謝野晶子訳のものを読んだのですが、まず何が難しいかといえば「平安時代の文化や習俗」を理解していないと話を見失ってしまうところです。

例えば、本作を読んでいると「男と女が会っていきなり結婚する」というようなシーンがけっこうあります。

これはどういうことなのかというと、当時の風習で女性は親兄弟でない男性に顔を見せることは原則なく、顔を合わせることはすなわち初夜を遂げて結婚することを意味しているため、そうした常識を理解していないと意味不明なシーンになってしまいます。

また、こういった風習があり男性は女性の容貌を結婚するまで見定められなかったため、手紙の書き方などから性格を判断し、外見はタイミングを見計らって隙見をして確かめるしかありませんでした。

と、結婚の話は一例ですが、このように古典常識を理解していないと読解難易度が一気に上昇してしまいます。

そのため、できれば高校で古典を読んである程度の古典常識を身に着けていると読みやすいでしょう。

ただ、頑張って読んでいればそのうちなんとなくですが理解できるのも本作の特徴で、かつネット上で検索すればたいていの謎は解けます。

我々にはイメージしがたい古語や和歌の解釈もググってしまえばなんとかなるので、読み始めて軌道に乗ればだんだん楽しくなってきますよ。

しかし、そうは言っても難しい作品なのは変わりありませんので、トライしてみて駄目そうであれば、本作を原作にした素晴らしい漫画「あさきゆめみし」をぜひ読んでみてください。

登場人物の名称・時系列の飛び方がかなりやっかい

古典常識が求められることは先にも述べましたが、たとえそれをある程度体得していたとしても次なる壁が立ちはだかります。

それは、唐突に変わっていく登場人物の名称や、改行もなく一瞬で変化していく時間軸の存在です。

特に登場人物の名称は非常にやっかいで、源氏の従兄でありライバルでもある頭中将という人物を例に解説していきましょう。

この人物は無論「頭中将」として知られているのですが、作中では彼以外に「頭中将」という人物が同じ名前で登場してきます。

これはなぜかというと、「頭中将」なる人物の姓名は明らかにされておらず、その当時彼が就いていた官職名で呼称されているからです。

つまり、「頭中将」が出世して役職を変えればまた別の呼び名でこの人物は呼ばれ、そして空白になった頭中将という役職にはまた別の人物が就いてしまうのです。

官位相当制
官位の一覧(出典:源氏物語を読む)

実際、「頭中将」なる人物は作中で「権中納言」「右大臣」「内大臣」「太政大臣」とその呼び名を変えていきます。

もちろん、作中で「右大臣」や「太政大臣」の職に就くのは彼一人ではないので、呼び名の移り変わりが相当やっかいなのがお分かりいただけるでしょう。

さらに困るのは、こうした呼称の変化が一瞬で説明されてしまうことです。

例えば、前の文で「頭中将は権中納言に昇進した」という説明が済まされると、次の行からはいきなり「権中納言は~」と何の断りもなく文が進んでいってしまいます。

そのため、本文を読む際には呼称に惑わされることなく「この三人称は一体だれを指しているのか」を他の文から推測していかなくてはなりません。

最初は全く頭がついていかず随分苦労しましたが、私は二十帖を超えたあたりからだんだんと読み方に慣れてきました。

皆さんも慣れてしまえば何とかなるとは思いますが、最初は辛抱が必要でしょう。

※続きは次のページへ

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