若きウェルテルの悩みの感想・考察(ネタバレ有)
ここからは、個人的に本作を読了したうえでの感想を書いていきたいと思います。
なお、記事の性質上この先はネタバレを多く含みますので、ご了承の上読み進めてください。
ウェルテルの情熱が痛々しいほどに伝わる
まず、本作を読んだうえで痛切に伝わってくるのは、若く活力にあふれたウェルテルの情熱的な痛々しいほどの「愛」に他なりません。
若かりし頃のゲーテがシャルロッテへの想いをそのままぶつけたようなダイナミックな文体は、荒々しくも繊細な彼の心を映し出しています。
しかし、その情熱は行き場を無くしていき、しだいに彼の心をむしばむようになっていくのです。
このあたりは作者の実体験を取り入れているだけあって、非常にリアリティのある描写によって描かれているように感じました。
確かに文体がやや硬く小難しい文章が並んでいるような印象は否めませんが、根本的な心情は非常に普遍性があり、現代のそれと変わるところは全くないと思います。
加えて、ウェルテルの恋路には様々な障害が出現してくるのです。
人間的に完璧な婚約者の存在・明確な拒絶を表明しないロッテと婚約者・旧知の男による殺人…。
どうしようもなく救いのない物語ではありますが、若さゆえの悲劇をお求めの方には最適かもしれません。
作中の愚痴や土地の比較は恐らくゲーデ自身の実感
本作をお読みになった方で私と似たような感想を抱いた方は少ないかもしれませんが、本作においてはウェルテルがかなりの量「愚痴を言うこと」や「土地の比較」を行っているように感じました。
まず、第一部では新たに移った土地のことを絶賛しています。見るもの聞くこと全てが素晴らしいといった感じで、彼がその地にかなり好印象を持っていることはすぐにわかるでしょう。
これは恐らくゲーテが実在のヴェッツラーに抱いている感想そのままであり、現実の彼もこの地にはたいへんいい思い出がつまっていたのでしょう。
無論、ロッテの存在もその一つだと思います。
しかし、耐えきれなくなって土地を移って以降のウェルテルは、官職やその同僚に関する愚痴をこぼすばかりになってしまいました。
これも恐らくゲーテがヴェッツラーと自身の住処を比較した際の感想をそのまま書き記したもので、若き日の彼にとって官僚という存在は形式主義の権化にしか見えなかったことでしょう。
実際、彼はウェルテルと異なってヴェッツラーを離れた後に生まれ故郷のフランクフルトへと舞い戻っています。
恐らく、帰国した彼を襲ったのは何もかもが新鮮であったヴェッツラーの暮らしに比べて、慣れてしまったフランクフルトに感じた退屈さではなかったでしょうか。
彼がヴェッツラーを訪れていた期間はわずか5か月程度であり、我々からすれば短期留学に等しい期間。
このくらいの滞在であれば、旅先の良い点ばかりを見て帰ってきた可能性も大いに存在すると思います。
たとえ手の届かない想い人がいる土地であったとしても、彼にとっては大切な思い出であったのでしょう。
まとめ
ここまで、18世紀後半から19世紀のヨーロッパ社会に大きな影響を与えた『若きウェルテルの悩み』に関する解説を行ってきました。
作品そのものを簡単とまで言い切ることはできませんが、分量はそれほど多くなくそこだけ見れば読みやすい部類に入ると思います。
テーマもかなり普遍的なため哲学的な話を抜きにしても楽しめると思いますので、ぜひ一度手に取ってみてください。
少なくとも、『ファウスト』に挑戦するよりは気軽に読み始められるハズです…。
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