ゲーテの実体験を描いた小説『若きウェルテルの悩み』のあらすじや感想、成立背景の解説・考察!

若きウェルテルの悩み 表紙ドイツ近現代文学
出典:Wikipedia
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恋愛に燃える若者は、時にそのエネルギーを歪んだ形で放出してしまうことがあります。

そんな主人公を描いた小説こそが、ゲーテの作品である『若きウェルテルの悩み』でしょう。

青年ウェルテルが恋した相手は、なんと婚約者のいる女性であったのです!

今回は、苦悩していく彼の生きざまと、社会との折り合いを描いたこの小説を解説していきます。

1ページ目で作品の基本情報と時代背景の解説を、2ページ目で作品のあらすじと感想を書いていますので、よろしければどちらもご覧になってください。

また、解説の都合上1ページ目からネタバレを含んでしまいますので、その点はご了承を。

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若きウェルテルの悩みの基本情報

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者   ゲーテ
執筆年  1774年
執筆国  神聖ローマ帝国
言語   ドイツ語
ジャンル 恋愛小説
難易度  やや読みにくい
上記からもよくわかるように、本作は近世と近現代の狭間に生まれた文学といっても過言ではありません。
そのため、内容そのものは非常に普遍的な一方で、時代背景や用いられている言葉がやや把握しずらく、我々にとっては少し難しく感じられる作品となってしまっています。
しかし、その部分の障壁さえクリアできれば現代でも読み応えのある小説であることは間違いないので、なるべく易しい形でその部分を読み解いていくつもりです。

若きウェルテルの悩みの簡単なあらすじ

新たな土地を訪れたウェルテルは、その地で出会った自然や友人たちに囲まれた様子を手紙で知らせてきた。

彼はそれなりの身分を有していたが、この地では身分の低いものであっても純粋な生き方をしており、たいへん新鮮な光景に映ったようである。

書簡には彼の満たされた生活について書かれているものであったが、ある日郊外の舞踏会へと出かけた際に出会った女性には特に惹かれていた。

「彼女は賢く美しい」そう書き送ってきたウェルテルが恋に落ちていることは明らかだったのである。

しかし、彼女が婚約者のいる身であることは重々承知していた。

それでも想い続けることをやめなかったウェルテル。いったい彼の恋は果たされるのだろうか…。

こんな人に読んでほしい

・先のない恋に溺れたことがある

・痛いほどの熱愛を感じたい

・ゲーデの作品に初めて触れる

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若きウェルテルの悩みの時代背景・読み方解説

ゲーテ 肖像画ゲーテ(出典:Wikipedia)

次に、本作の時代背景や読み方の解説を行っていきます。

この作品を理解するには時代背景やゲーデの生涯に関する把握が不可欠で、そのあたりを中心に解説を加えていきますね。

神聖ローマ帝国時代の末期に描かれた小説

まず、この作品で描かれている舞台や、ゲーテが生きた時代は「神聖ローマ帝国」が健在であった最後の時期に相当します。

もともと、962年に当時ドイツ王として君臨していたオットー1世によって建国された神聖ローマ帝国は、度重なる分裂や政争を経ながらも実に1000年近い期間国家として存続していくことになるのです。

名前からも読み取れるように、彼らはかつての大帝国「ローマ帝国」から連なる名誉ある国家を自任していたため、同帝国から名前を採用していました。

しかし、これだけの歴史ある帝国でありながら、最末期にはかなりの衰退を見せていたようです。

代々名誉ある一族である「ハプスブルグ家」が世襲し続けてきた皇帝の座も、1789年に勃発したフランス市民革命の影響を受けナポレオンによって奪い取られ、帝国内でもナポレオンに与する中小の国家が現れ始めました。

そして、1806年には帝国としての役目を終え、最後の皇帝フランツ2世が退位したことで帝国は滅び去ったのです。

ちなみに、ゲーテが『若きウェルテルの悩み』を執筆したのが1774年で、これは彼が25歳の頃でした。

つまり、ゲーテは衰退していく帝国と共に生きる人物であったのです。

彼は当時にしてはかなり長寿な人物であったため、神聖ローマ帝国の滅亡を見届けることになりました。

しかし、彼は帝国の滅亡に対して非常に無関心で冷淡な態度をとったため、当時の人々にとって帝国の権威がほとんど感じられていなかったことを伝える貴重な証言にもなっています。

ヨーロッパでベストセラーとなり、ナポレオンも愛読

ウェルテルの著作と言えば、彼が晩年に記した戯曲『ファウスト』のほうが知名度としては上かもしれません。

しかし、この作品はゲーテの晩年に描かれた作品であり、同作の第二部はゲーデが亡くなった翌年に発売されているほどです。

そのため、彼が世間に名を轟かせたのは、この『若きウェルテルの悩み』の執筆によるところが大きいでしょう。

25歳という若さで記したこの作品はヨーロッパ中で大ベストセラーになり、主人公の真似をする人物が多数表れたことから「ウェルテル効果」という造語が生み出されるほどでした。

その影響は非常に大きかったようで、同書の愛読者としてナポレオンの名がよく知られています。

ナポレオン 肖像画ナポレオン(出典:Wikipedia)

彼は飽きっぽい性格で本を通読することがほとんどなかったと言われるほどですが、この作品だけは例外として7度も繰り返して読んだと伝えられています。

また、上述のようにナポレオンは神聖ローマ帝国を滅亡に追いやるのですが、彼がヨーロッパの諸侯を一度に集めた際には憧れのゲーデと面会。

彼を一目見るや感動したナポレオンは「ここに人有り!」と叫んだとも。

したがって、この作品は単なる文芸作品というだけでなく、歴史そのものにも非常に大きな影響を与えている作品と指摘することができるでしょう。

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ゲーテの実体験をもとに執筆された私小説

作品の展開としては、ざっくり説明すると「婚約者のある女性に恋した主人公が苦悩する話」と表現できます。

この「苦悩」に関しては空想のものではなく、ゲーテ本人の実体験をもとにしているのです。

大学で学業を修めた彼は、法学の勉強を積むべく訪れたヴェッツラー(現在のドイツにある都市)にて舞踏会に参加します。

ヴェッツラー市街
現代のヴェッツラー市街(出典:Wikipedia)

そこで、本作のヒロインでもあるロッテのモデルになった女性「シャルロッテ・ブッフ」に出会い、作中同様恋に落ちました。

しかし、不幸にも彼女は彼がヴェッツラーで知り合った友人のケストナーと婚約していることを知るのです。

諦めきれなかった彼は何度も彼女のもとを訪れましたが、最終的には想いを伝えることなく帰国。

己の不幸から自殺を考えるほど精神を弱らせましたが、彼のもとにヴェッツラー時代の友人が人妻との痴情のもつれが原因で拳銃自殺したという知らせが届きます。

そこで、ゲーテは自身の経験と拳銃自殺の知らせを組み合わせて「これだ!」と言わんばかりに小説づくりに没頭しました。

こうして出来上がったのが『若きウェルテルの悩み』という作品なのです。

ちなみに、自殺願望は創作にまい進するうちにどこかへ消えてしまったようで、彼はその後も長く生き続けることになりました。

その後、驚くべきことに1816年、彼は60歳にして憧れの女性であったシャルロッテと再会したという記録も残されています。

友人の自殺をネタにこれ幸いと小説を書き上げるとは何とも薄情な人間だ、と思わないでもないですが、「旅先での不義の恋と旅先の友人の不倫による死」が組み合わさればそりゃ小説を書きたくなるのも分かります。

だってどう考えてもネタとして面白いじゃないですか、めちゃめちゃ不謹慎ですけど。

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