『吾輩は猫である』のあらすじや感想、内容の解説!「幸運を呼ぶ猫」をモデルに描いた漱石の出世作

吾輩は猫である アイキャッチ 日本文学
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吾輩は猫であるの感想・考察!(ネタバレ有)

今で言う「日常物」に近い作風

『吾輩は猫である』を読んでみた感想としては、話の起承転結を楽しむより、猫という気ままな存在が、明治の知識人たちにツッコミを入れまくる様子を楽しむ作品だと思いました。

一応、起承転結でいうと、金田鼻子が出てきたところが話の「転」の部分に当たり、「結」の部分はお祝いが終わった後で猫が飲み残しのお酒を飲んで水瓶に落ちて死んでしまう部分になるのでしょう。

ただ、この作品は話の流れよりも、ストーリの間の全く本筋とは関係ないキャラクター同士のやりとりの方に重点を置かれてるように感じました。

そもそもラストの主人公の猫が死ぬところなんてかなりあっさりしています。個人的には今までずっと感情移入していた猫が亡くなったで少なからぬ衝撃を受けたのですが、恐らく漱石からしたらそれまでの描写で書きたい部分が全て書き終えてしまったのだと感じました。

漱石が書きたかったのは、つまり登場人物たちのおもしろい会話であったのだと思います。

実際、本作を書き終えた際、友人で詩人の高浜虚子が作品を読み上げる機会があったそうです。その時、漱石は自分の書いた作品を読み上げられながらしばしば吹き出して笑っていたそうです(自分の作品でそんなに笑うの? とちょっとツッコミたくもなりますが…)

近年だとアニメ作品とかでよくある「日常物」に近いのではないかと思います。特に話の起承転結に重さが置かれているわけでなく、なんとなーくキャラクターたちが話すのを楽しむといったジャンルに近いと思いました。

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自由の象徴「猫」と作中でのギャップ

本作の魅力を引き出しているもう一つの点として、やはり「猫」の尊大な態度も挙げられるかと思います。簡単に言うと、一般的に思い描く「猫」のイメージとかなり差があるため、読んでいてとても面白く感じます。

一般的に、猫といえば「自由気ままで何にも縛られない存在」として描かれがちですが、冒頭で自分のことを「吾輩」と呼び、「である」などと厳しい口調で話している点は、今聞いてもちょっと滑稽で面白さを感じます。

また、作中で日露戦争の心配をしたり、ちょっとした失敗の気分転換として可愛い子に会いに行こうとしたり、非常に人間臭く描写されています。こうした一般的な猫とのギャップが非常にコミカルです。

さらに言うなら、本作の猫たちはかなり悲惨な経験をしています。これも、一般的な「猫」のイメージとはギャップがあります。

例えば、魚を盗んだ罰として足を叩かれて足を引きづるようになってしまったり、「吾輩」が想いを寄せていた雌猫は風邪で死んでしまったり。妙な生々しさ、生活感が一層猫に対する親近感を抱かせてくれます。

先ほど、本作は「猫が好きな人に読んでほしい」と書きました。猫を飼っている人でも猫が何を考えているのか分からない(猫が好きな人はそこが良いと言うのですが)とよく言いますが、実際にはこんな感じで小難しいことを考えているのかも…と妄想しながら読むのも、とても楽しいのではないかと思います!

漱石は難しいことを考えずに本作を書いた?

様々な夏目漱石論の書籍を読んでみると、「金田鼻子は権力の象徴である」とか「苦紗弥先生は明治維新後の近代的人物の典型的な造形である」とか「猫の死はそれまでの日本文化が西洋文化に負けて衰退していくことのメタファーである」といった考察をしている文献などもありました。

しかし、私はこの作品は漱石の「おもしろい話を書きたい!」という純粋な気持ちから生まれたものなのではないかと思います。

実際、鼻子の娘もしれっと結婚できていますし、ラストでは苦沙弥先生の存在感はほぼゼロに等しいです。加えて、本当に猫が日本文化の暗喩であるなら、もう少し死の描き方がていねいであるべきなのではないかと思いました。

ただ、『吾輩は猫である』に当時の社会情勢や人々の暮らしが反映されているのは事実なので、そういった点をふまえつつ読むのは非常におもしろいと思います。

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まとめ

古典文学の中でも非常に読みやすく、内容自体もウィットに富んでいる『吾輩は猫である』。

タイトルだけが一人歩きしていて、なかなか内容は知らないという人も多いかも知れません。ですが古典=お堅い文章という固定観念を打ち破るのにちょうどいい作品だと思います。

惜しむべき点はどうしても言葉遣いが古めかしく、言っている文章の内容自体は簡単なのに、一見するととっつきにくいことでしょう。

そのため、とにかくこの作品の楽しみ方としては、あまり深く考えず楽しく読むのが1番かと思います。

文章として読むのもいいのですが、舞台やミュージカル化もしているの、そういった形で一度大まかなストーリーを追ってから文章を読むのもいいと思いますよ。

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