『ボヘミアの醜聞』のあらすじや感想、内容を解説!ホームズの好敵手アイリーン・アドラーが登場する人気短編

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ボヘミアの醜聞の感想・考察!(ネタバレ有)

ここからは、本作に関する考察を含めた感想を述べていきたいと思います。

なお、記事の構成上ネタバレ要素が含まれていますので、未読の方はぜひ作品を読んでから先を読み進めてください。

作品のメインは「変装」 三者三様の変装合戦に勝利したのは?

トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」シリーズが大好きな方なら、『ボヘミアの醜聞』もきっと気に入るはずです。その理由は、事件のカギとなるのが「変装」だから。

このエピソードは推理云々というよりも、「変装がバレなかったヤツの勝ち!」という構成になっているのです。

作中には3人の変装が登場します。まずは依頼人であるボヘミア王の変装。こちらは実にチープな変装だったため、あっさりとホームズに見破られてしまいます。

次にわれらがホームズですが、今回は豪華にも2種類の変装を披露。一人目は情報収集のための「酔った馬丁のような人物」で、二人目は「非国教会派の牧師」。後者はアイリーンの屋敷に潜り込むための変装でした。いずれも見事な変装でしたが、最後の最後でアイリーンに正体を見破られます。

そして最後に変装を披露したのがアイリーン・アドラー。元々女優の修行をしていた彼女は、男装して牧師に変装していたホームズを尾行。大胆にもあいさつまでしていますが、ホームズは彼女だとは気づきません。

翌朝ホームズは、ボヘミア王とともに写真を取り返しにアイリーン宅を訪れますが、写真を狙われていると悟った彼女は、新婚の夫とともにヨーロッパ本土に旅立った後でした。彼女の男装については残された手紙によって初めて明かされ、まんまと一本取られたことに気づくホームズ。

三者三様の変装合戦は、最後まで見破られなかったアイリーンに軍配が上がり、写真も戻っては来ませんでした。

アイリーンが「写真はどこにも公表しない」と手紙で約束したことでボヘミア王は納得し、結果オーライとはなりますが、見事にホームズを出し抜いたアイリーンの見事な変装テクニックが事件の結末を大きく変えることとなりました。

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ヴィクトリア朝に現れた新しい女性「アイリーン」

私自身、実はホームズが出し抜かれるという展開が気に入らず、このエピソードはあまり好きになれませんでした。ただ改めて読み直してみると、エピソード全体を通して主導権を握るアイリーンのたくましさに素直に感心させられます。

そもそも元カレだからといって、一国の王を脅しにかかるというのがまず驚きです。そんな権力者相手にうまく立ち回れる女性は多くはないでしょうし、私が絶世の美女に生まれていたとしても無理だと言い切れます。

また、脅すほど執着していたのに、ほかに愛する人ができたら急に結婚して「もうどうでもいいです」と言っちゃうところなどは非常に小悪魔的で、男性陣をきれいに翻弄している点もおもしろいと思います。

書き手のドイルがアイリーンをどう思っていたのかはわかりませんが、ヴィクトリア朝にこんなにも大胆な女性キャラを誕生させていたことに驚かされます。

その時代の一般的な気風とはおそらく合わなかったであろうアイリーンは、もともとアメリカ出身という設定。「アメリカ人だからイギリス人とは違う」というやや雑なくくりではありますが、その分自由に動かしやすいキャラだったのかなとも思います。

恋?尊敬?ホームズのアイリーンへの気持ちを推理

ワトスンによれば、ホームズのアイリーンへの気持ちは恋愛感情ではないとのことですが、私は恋心だったのではないかと思っています。

ときに仕事命の推理マシーンとなるホームズですが、ワトスンとの関係を見てもわかるとおり実は友情に厚い人情派。

今回アイリーンを間近で見たホームズは、素直にその美しさを認めていますし、彼女からもらったソヴリン金貨や彼女の写真を記念に取っておこうとするところからも、彼女に惹かれているのを感じます。

調査で馬丁に変装したホームズは、偶然にもアイリーンの結婚に立ち会うことになるわけですが、帰宅してからの妙なテンションの高さは、軽い精神的ショックだったのではないかとも推理できます。

もしもホームズにそれまで恋愛経験がなかったとしたら、アイリーンへの気持ちが恋であるという認識自体ができなかったという可能性もあり、ワトスンの「恋愛感情ではない」という説も、単に「あのホームズが恋なんかしないだろう」という決めつけだったのでは?と考えてしまいます。

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まとめ

今回はシャーロック・ホームズシリーズの短編第一弾「ボヘミアの醜聞」を取り上げました。

私自身は、シャーロック・ホームズが負けてしまうというのがちょっと悔しくて、アイリーン・アドラーの見事さよりもそちらに気持ちが行ってしまう派でしたが、天下のシャーロック・ホームズを前にして、堂々と立ち回ったアイリーンはやはりすごいですね。

シャーロック・ホームズシリーズにはこの作品以降も多くの魅力的な女性が登場します。

ホームズと女性たちの攻防に注目しても、おもしろい発見があるかもしれません。

※物語の人物名や固有名詞の表記は、「シャーロック・ホームズの冒険(深町眞理子訳/創元推理文庫/2010年版)」を参考にしました。

【参考文献】

・シャーロック・ホームズの冒険【新訳版】(深町眞理子訳/創元推理文庫/2010年版)

・シャーロック・ホームズ完全ナビ(ダニエル・スミス著/日暮雅通訳/国書刊行会/2016年)

・シャーロック・ホームズ大図鑑(デイヴィッド・スチュアート・デイヴィーズほか著/日暮雅通訳/三省堂/2016年)

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