コナン・ドイルが生み出し、世界中のファンに愛され続ける「名探偵シャーロック・ホームズ」シリーズ。
しかし、実はシリーズのほとんどが短編作品であるということをご存知でしょうか?
今回ご紹介するのは、56作出された短編の中でも最初の作品『ボヘミアの醜聞』(短編集『シャーロック・ホームズの冒険』収録)です。
ホームズを語る上で避けては通れない女性「アイリーン・アドラー」が登場し、ファンの間でも人気の高い作品です。
前半はあらすじとトリビアをご紹介し、後半はネタバレありで考察していきます。
有名短編の世界をぜひお楽しみください。
ボヘミアの醜聞の作品情報
作者 | アーサー・コナン・ドイル |
---|---|
執筆年 | 1891年 |
執筆国 | イギリス |
言語 | 英語 |
ジャンル | ミステリ |
読解難度 | 読みやすい |
電子書籍化 | 〇 |
青空文庫 | × |
Kindle Unlimited読み放題 | 〇 |
ホームズシリーズの短編一作目。ホームズを感嘆させた「あの女性」として知られる、アイリーン・アドラーが登場する人気の高いエピソードです。
キャラクターの個性が際立っていて、展開もスピーディーなので読みやすいと思います。
ボヘミアの醜聞の簡単なあらすじ
1888年3月。結婚を機にホームズとの同居を解消し、開業医として忙しく働くワトスン。ある日ベーカー街221Bの近くを通りかかった彼は、懐かしさから久しぶりにホームズを訪ねます。
ちょうど新たな依頼人を待っていたホームズは、依頼の手紙をネタにワトスンとの推理ゲームを開始。懐かしい雰囲気の中、依頼人が到着するとワトスンもその場に立ち会わせます。
変装して現れた男の依頼は、結婚を控えたボヘミア王の過去の恋愛の証拠となる秘密の写真を「ある女」から取り返すこと。その女こそが高名なオペラ歌手にして類まれなる美貌を持つアイリーン・アドラーでした。
依頼を受けたホームズは早速調査を開始しますが、思いもよらない展開に巻き込まれることになります。ホームズの短編第一弾にして、ホームズと好敵手の攻防が楽しめる人気作品です。
こんな人に読んでほしい
・ホームズを感嘆させた女性のエピソードを読みたい
・長編はややハードルが高いと思っている
ボヘミアの醜聞のキャラクターやタイトルを解説!
ホームズ作品の記念すべき短編第一弾!
『緋色の研究』『四つの署名』というホームズ作品の長編2作を発表したコナン・ドイルは、1891年に創刊されたばかりの雑誌「ストランド・マガジン」で、ホームズもののの短編連載を開始します。
その第一弾となったのが『ボヘミアの醜聞』でした。本作はエドガー・アラン・ポーの「盗まれた手紙」を下敷きにしているともいわれ、短く読みやすい短編の中に、ホームズの推理と個性、変装のテクニック、そして好敵手との攻防が詰め込まれています。
アーサー・コナン・ドイル(出典:Wikipedia)
この作品を皮切りに続々と短編が発表され、人気に火が付いたホームズ。ドイルは当初6作ほどで辞める予定でいたのですが、あまりの人気に雑誌側が手を引かず、結果的に同誌での連載で56作もの短編を世に送り出すこととなりました。
ファンの間でも人気の高い女性キャラ「アイリーン・アドラー」
この作品で、男性陣を翻弄する美女として描かれる「アイリーン・アドラー」。ホームズ作品を代表するキャラクターとして認知され、テレビドラマや映画などの映像化作品でも必ずと言っていいほど登場する人気ぶりです。
群を抜く人気と知名度を誇る彼女ですが、実は正典でアイリーン本人が登場するのは『ボヘミアの醜聞』の一作のみ。にも関わらず、現代もなお世界中の評論家によってキャラクターの分析が行われ、ホームズを語るうえで欠かせない存在となっています。
『ボヘミアの醜聞』の冒頭は、「アイリーン・アドラーがホームズにとって特別な女性である」という解説から始まります。恋愛関係ではないということが強調されてはいますが、この作品はホームズとアイリーンの唯一の思い出が詰まった貴重な物語でもあるのです。
本作はワトスンが結婚した後のエピソード
この作品では、ワトスンは結婚して開業医となり、ベーカー街でのホームズとの同居を解消しています。日々の雑事にも忙しく、残念ながらホームズとは疎遠になってしまっているようです。
ホームズの作品は、長編を含めて作品の発表順と時系列がバラバラなので注意が必要です。作品の発表順に事件が起こっているわけではないので、登場人物たちの状況も作品ごとに微妙に違ってきています。
事件が起こった順番で作品リストを作成してくれている書籍やサイトなどもありますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
作品タイトルに込められた2つの意味
作品タイトルの『ボヘミアの醜聞』には、「ボヘミア王のスキャンダル」という文字通りの意味のほかに、もう一つ意味が隠されているという説があります。
キーワードは「ボヘミアン」。「ボヘミアン」とは芸術家たちの自由奔放なライフスタイルを指す言葉であり、作品が発表された1890年代ごろに欧州で盛り上がりを見せていた考え方です。作品中でもホームズの性質を表す言葉として使われています。
この作品は探偵として、また男性として、一人の女性に翻弄されるボヘミアン(ホームズ)のスキャンダルが描かれてる物語という見方もできるわけです。
作者の真意はわからなくても、後世の考察でこうした深読みが楽しめるのも古典ミステリの大きな魅力ですね。
※作品の感想は次のページで解説!
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