『アンナ・カレーニナ』のあらすじや感想、解説・考察!アンナとリョーヴィンの愛に注目

アンナカレーニナ アイキャッチ ロシア近現代文学
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ロシアが生んだ世界的文豪として、レフ・トルストイの名を知らない方はいらっしゃらないかもしれません。

彼の名声は我が国日本にも轟いていますが、一方で「彼の作品を読んだ」という方はそれほど多くないかもしれません。

トルストイの代表作としては『戦争と平和』および『アンナ・カレーニナ』がしばしば挙げられますが、どちらも長編小説で小難しいというイメージが付きまといます。

そこで、この記事ではトルストイの作品を身近に感じてもらえるよう、上記の二冊ではより読みやすい『アンナ・カレーニナ』という物語を紹介していきます。

なお、1ページ目はあらすじや作品情報・読み方などの解説文を、2ページ目は書評(ネタバレ多め)を掲載していますので、部分ごとに読んでいただいても構いません。

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アンナ・カレーニナの作品紹介

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者 レフ・トルストイ
執筆年 1873年
執筆国 ロシア
言語 ロシア語
ジャンル 長編小説・恋愛小説
読解難度 やや読みにくい
電子書籍化
青空文庫 ×
Kindle Unlimited読み放題 △(上・中巻のみ)
この作品は、ロシア文学らしく人物名や地名などが長く、かつ大量に登場するため読みにくいところがあります。
当記事で登場人物の紹介はしませんが、文庫によっては付属の資料として「主な登場人物の一覧と紹介」を掲載してくれているので、随時そちらを確認しながら読むのがいいかもしれません。

アンナ・カレーニナの簡単なあらすじ

貴族として高い地位に就くカレーニン

彼は、アンナ・カレーニナという美しい女性を伴侶としていた。

地位も美貌も併せ持ったアンナは社交界におけるバラのごとき存在であり、周囲の尊敬を集める。

ある時、彼女は兄夫婦の仲を取り持つべく、汽車でモスクワへと降り立った。

そこで出会ったのが、若くしてエリートらしい気品を醸し出す青年将校ヴロンスキーという男であった。

彼は駅で起こった事故に際しスマートな振舞いを見せると、アンナは彼に惹かれるようになっていく。

しかし、彼女にはカレーニンという夫がいた。満たされぬ正当な愛と、満たされる不義の恋。

果たして、アンナの人生はどのような展開を迎えるのであろうか。

こんな人に読んでほしい

・高貴な女性が恋に溺れていく様子を見るのが好き

・現代にも通じる「愛」「農村と都市」「貴族と庶民」などの要素を一度に味わいたい

・トルストイにチャレンジしてみたい

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アンナ・カレーニナの内容や評価、派生作品の解説

この作品は、とにかく幅広く鋭いテーマ設定をしているため、我々のような素人だけでなく作家からの評価が極めて高いのも特徴です。

以下では、そのあたりの解説を行っていきます。

アンナとリョーヴィンの「愛」を軸に、貴族や都市の問題をえぐり出している

本作は作中で描かれているテーマが非常に多く、かつ鋭いことが大きな特徴といえるでしょう。

まず、物語の軸となるのは「アンナの抱く不義の愛」「リョーヴィンの抱く純愛」という二通りの愛です。

クラムスコイ 見知らぬ女アンナをイメージしたとされる絵画(出典:Wikipedia)

あらすじでは紹介しませんでしたが、リョーヴィンは本作における「裏主人公」とも呼べる存在で、彼とアンナの愛を対比しながら物語が進行していきます。

また、この「アンナ」と「リョーヴィン」という両者は、良くも悪くもすべてが対照的に描かれている点にも注目するべきでしょう。

アンナは、

・恵まれた貴族の女性
・都市の社交界で光り輝いている
・不義の愛を抱いている
こうした存在から物語としてスタートしていきます。
一方、リョーヴィンは、
・生活に苦労する農地経営者の男性
・農村の世界でくすんだ存在に成り下がっている
・純な愛を抱いている
と、その対照性はだれの目にも明らかでしょう。
ここで彼らの運命がどのように変化していくかは触れませんが、単なるラブドラマではなく「人間社会が抱える様々な問題点」をえぐり出しているという点に、この作品が世界的名作となり得たゆえんがあります。
実際、この作品を高く評価している作家は枚挙に暇がなく、同じロシアであればドストエフスキー・レーニンらが、日本でも志賀直哉らが愛読者として知られているのです。
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リョーヴィンには作者トルストイ自身の苦悩と光明が反映されている

先にも述べたように、本作においては「農村で悪戦苦闘する純な青年」として描かれているリョーヴィン。

彼の設定については、トルストイ自身の経験や思想が反映されていると言われています。

リョーヴィン自身も一応は貴族の立場にあるのですが、華々しい社交界で活躍を見せるよりも農地の経営に力を入れ、そして純愛を貫いていきました。

こうした彼の生き方は、実際にトルストイ自身のそれと酷似しているところがあります。

トルストイ 写真若かりし頃のトルストイ(出典:Wikipedia)

トルストイはかつて自身も農地改革に取り組んだ経験があり、農奴と呼ばれる下層の人々と共に農村で生きていました。

加えて、彼は文豪にしては珍しく女性に対しても清廉で、浮名を流すようなことはありませんでした。

晩年には不仲となってしまうトルストイ夫婦ですが、このサイトでも触れてきた「女性関係がちょっとアレ」な谷崎潤一郎や太宰治らと比較するとなんとも「マトモな」夫婦に思えますね。

したがって、こうした姿勢は言うまでもなくリョーヴィンの生き方に重ねられており、彼自身が当時の社交界や都市・女性という存在に憤りを抱いていたことがよくわかります。

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たびたび映画や演劇の題材となっており、アンナを演じる女優には要注目

世界的な名作として知られるこの作品は、執筆された時代から数十年で映画文化が一気に普及したためか、たびたび映画化を繰り返されている作品でもあります。

最初に映画化されたのはまだ映画に声が付いていなかったサイレント映画の時代(1927年)であり、これはアメリカで制作されました。

映画としては内容がアメリカ国民向けに大胆なアレンジを施しているらしく、視聴したことはないのですが作品紹介の時点で「コレジャナイ感」が漂っているのは事実です。

しかし、この作品で注目するべき点は、アンナ役をサイレント時代の花形美人女優であるグレタ・ガルボが演じていることに他ならないでしょう。

グレタ・ガルボ 写真(出典:Wikipedia)

彼女の演技は当時のアカデミー賞にノミネートされるほど評価され、もともと小説の時点でアンナに付与されていた「絶世の美女で貴婦人」という設定から、映画化される際には時代を代表するような名女優が彼女役を務めるようになっていきました。

後に彼女を演じた女優は、

『風と共に去りぬ』で知られるヴィヴィアン・リー

ヴィヴィアン・リー 写真(出典:Wikipedia)

007シリーズにも出演歴があるソフィー・マルソー

ソフィー・マルソー 写真(出典:Wikipedia)

言わずと知れた人気女優キーラ・ナイトレイ

キーラ・ナイトレイ 写真(出典:Wikipedia)

など、まさしく気品漂う美人揃いなのです!

ただ、いかんせんトルストイの作品を映像化するのは難しいらしく、映画の出来はどれもパッとしないと言われることも多いのは事実。

とはいえトルストイの作品を読むのは一苦労だと思いますので、もし読んでみて厳しそうであれば一番最近映画化された2013年公開の映画を見てみるのがいいかもしれません。

また、演劇でも数多く題材に選ばれており、宝塚歌劇団や東宝ミュージカルなどの人気演目にもなっているようです。

舞台がお好きな方はこちらもチェックしてみるとよいでしょう。

※続きは次のページへ

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