平家物語の感想・解説(ネタバレ有)
平氏の家紋(出典:Wikipedia)
ここからは、個人的に本作を読了したうえでの感想を書いていきたいと思います。
なお、記事の性質上この先はネタバレを多く含みますので、ご了承の上読み進めてください。
まあ、平家の末路についてはネタバレもへったくれも皆さんご存知とは思いますけど…。
生々流転の原則を改めて強く感じる
これについては改めて言うまでもないのかもしれませんが、本作には強烈なまでの仏教観に基づいた「無常」の思想が読み取れます。
加えて、本作を記したのが平家の人間ではない以上、その栄華と没落ははたから見ていてもあまりに衝撃的なものであったのがよくわかります。
この作品を読んだだけでも「常に栄えるものはないのだ…」ということを強く感じるということは、作者の人生観にさえ非常に大きな影響を与えたのでしょうね。
考えてもみれば、現代から見ても歴史上ここまでのスピードで栄えて没落したという例はほとんどないのではないでしょうか。
「栄光と没落」で思い出すのは奥州藤原氏や明智光秀あたりですが、奥州藤原氏は一応三代にわたって栄華を持続させましたし、光秀に至っては天下に君臨する以前に討たれてしまいましたから。
そう考えると、平家物語が面白いというより、そもそも史実の時点で十分に面白いといったほうがいいのかもしれません。
もちろんそこを上手にアレンジしたという点で平家物語は素晴らしい作品であり、文学史に残るのも納得といったところです。
戦だけでなく仏事や日常も描かれている
私としては、教科書や歴史の勉強をしているうえで本作を手に取る機会が多く、やはり「平家物語=戦」というイメージがありました。
ジャンルとしては軍記物になるのでその解釈が間違っているわけではないのですが、内容を見てみると想像していたよりも軍事的なシーンがずっと少なかったのが印象的です。
その代わりとして特に多かったのが仏事のシーン。一般常識として本作が仏教観に彩られた作品であることは知っていたのですが、いざ読んでみるとこれが非常に目立ちます。
私としてはこうした点から当時の人々がどのような生活をして、どのような価値基準を持っていたのかが理解できるため面白く感じましたが、戦好きにとってはいささか退屈に感じられるかも。
また、平安時代の物語ということで「物の怪」や「天皇の即位」、「色恋」など、前半~中盤部分にかけては戦よりもむしろ日常の描写が目立つかもしれません。
つまり、我々がよく知る『平家物語』の有名なエピソードは、たいていが物語の後半部分より引用されているのです。
そのため、通読していくとこうしたギャップを感じることができ、より感覚的に身近な状態で平家の滅びを追いかけることになります。
確かに通読は簡単ではありませんが、頭から読むことで登場人物たちにも思い入れができますし、「滅びの美」をより体感することが可能になるのです。
このあたりはある程度物語を作成する際に意図していたようにも思えるので、「やるな、鎌倉の貴族!」と賛辞を贈りたいところですね。
まとめ
ここまで、日本屈指の軍記物『平家物語』に関する解説を行ってきました。
確かに古く膨大な量の文章を読むことは簡単ではありませんが、普遍性もあり内容を味わうのに時代は問わない作品だと感じます。
多少歴史に興味がないと興味が持てない作品かもしれません。しかし誰もが教科書で暗唱をさせられたはず。
もし中高生の頃に教科書で興味を持ったまま行動を起こしていないという方がいらっしゃいましたら、この機会にぜひ手に取ってみてください。
コメント