出版年がなるべく新しい版を手に入れるべき
これは古典文学特有の問題で、過去に名作として称えられている作品は何度も出版を繰り返されることが多いです。
例えば、ドストエフスキーの『罪と罰』を例に出すと、日本語の翻訳版だけに絞ってみても実に多くの本が出版されていることがわかるでしょう。
私が把握しているところでは、
・光文社版(光文社新訳古典文庫)
・岩波書店版(岩波文庫)
・KADOKAWA版(角川文庫)
…など、同じ作品を同じように日本語訳したものが膨大な数出版されています。
さらに、このうち同じ出版社から出版されている本であっても繰り返し出版されているものも存在し、例えば岩波書店版はだいたい20年に一度くらいのペースで出版されています。
つまり、同じ岩波文庫の『罪と罰』であっても、1999年に出版された『罪と罰』と1958年に出版された『罪と罰』が存在するといった事態が起こり得るのです。
こうして同じ作品が何度も出版される理由を詳しくは述べませんが、一つだけ頭に入れておくと「出版年がなるべく新しいものを手にするとよい」ということは言えます。
この理由は、海外文学の翻訳作品の場合、比較的新しい年度に翻訳された作品のほうが我々が日常的に使用する日本語に近い翻訳がなされている可能性が高く、端的に言ってしまえば「読みやすい」と思われるからです。
もちろん例外はありますが、基本的に初学者のうちは新しいものを読んでいけば楽しく読書ができると思われます。
ちなみに、こうした目的であれば、上記でも紹介した光文社の「新訳古典文庫シリーズ」が読みやすくオススメです。
ただし、ここで示した「出版年」というのは一つの基準に過ぎません。
そもそも日本語の文章であれば基本的に翻訳はなされませんし、いくら出版年で差がつくといっても「2019年出版の本」と「1980年出版の本」ではそれほど読みやすさにも変化はないのです。
そこで、困った時は次に紹介する選び方を参考にしてみてください。
脚注や図表が充実している本を選ぶべき
「出版年にもそれほど差はないし、そもそも翻訳はされていない…」
というような場合には、本の脚注や図表の充実度を比較して作品を選ぶと良いでしょう。
同じ作品が何度も出版されているということは、つまり一見そっくりな本でも細部に何かしらの違いがあるということです。
代表的なところでいえば翻訳者や解説者の違いで、ここを基準に本を選ぶという方も少なくないでしょう。
実際、私も好きな翻訳者や作家が作品を担当していれば食指が動きますし、極めてオーソドックスな選び方と言えます。
とはいえ、初学者のうちは「そんなん言われてもよくわからないんですけど…」と思われるでしょう。
その場合、作品にある脚注や図表の充実度を本選びの基準にしてもいいかもしれません。
脚注とは、分かりやすく言えば「私は考える葦である」という一文があったとして、この「葦」という単語を文末で説明してくれるような補足のことを指します。
これは特に日本語の古典にありがちな傾向ですが、現代ではまず使わないような用語や漢字がまるで常識のように登場することも少なくないです。
確かに執筆当時は常識的な語だったのかもしれませんが、我々にはちんぷんかんぷん。
そこで活躍するのが脚注で、これがあると「あ、こういう意味なのね」と理解することが可能です。
他にも、作品によっては登場人物の説明や作中の地図などを掲載していることもあり、細かくみていくと同じ作品であってもけっこう違ってきます。
そのため、迷ったときは脚注や図表の充実度をチェックしてもいいかもしれませんね。
図書館には行きたくないが金もない!という方は青空文庫を
皆さんは本を手に入れる時、おおかた3通りくらいの方法を検討するのではないでしょうか。
単純に本を買う方法は置いておいて、古典作品を入手するのに図書館の存在は非常に有用です。
最新の本や漫画を借りるのはなかなか難しいかもしれませんが、古典作品であれば近所のしがない図書館にも恐らく一生かかっても読み切れないほどの蔵書量が存在することでしょう。
そのため、図書館を利用するのはかなりおススメできます。
しかし、図書館には「貸出期限」というやっかいなものがありますよね。
数週間で古典文学を読み切るのは簡単ではありませんし、わざわざ本を返却しに図書館へと赴くのは手間がかかります。
そこで皆さんに紹介したいのが、著作権が失効した本をデジタルデータで公開しているサイト「青空文庫」です。
このサイトは有志のボランティアによって運営されており、公開されている本は全て無料で読むことができます。
また、電子データということでタブレットやブックリーダーで読むこともでき、上手く活用すると非常に便利なサイトです。
著者の死後50年経った作品しか存在しないという欠点こそあるものの、日本の古典と呼ばれる作品は大半を読破することが可能になっています(海外文学は「訳者」の死後という扱いになるため、数は少ない)
私も積極的に利用しているサイトではありますが、青空文庫で作品を読む場合には多少の手間がかかるという事実もお伝えしておかなければなりません。
それはどういうことかというと、著作権の関係上脚注や図表といった解説が一切存在せず、純粋な著者の文章のみを読んでいかなければならないのです。
そのため、作品によっては一見して意味を取れない漢字や用語が存在し、単純に読んでいくとなかなかに苦労をさせられます。
しかし、現代は誰でもスマホを持っているといっても過言ではない時代ですから、困った時はスマホで調べてしまえばいいのです。
わざわざ辞書を引くまでもない時代なので、青空文庫の利便性は飛躍的に上昇しているといえるでしょう。
まとめ
ここまで、古典文学特有の問題を解決するための作品選びについて解説を加えてきました。
確かに、こうして記事を立項して選び方を紹介しなければならない点を踏まえれば、現代文学と比べるととっつき辛いのは否めません。
しかし、元をたどっていけば現代の作家たちも確実に古典文学から影響を受けており、古典にチャレンジすることは現代文学をより深く楽しむことにも繋がります。
ぜひ、苦手意識を捨てて古典の世界へ飛び込んでみてください!
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