当サイトは「初学者にも楽しんでもらえる古典文学作品総合サイト」を掲げて活動をしています。
そのため、なるべく分かりやすい形で古典文学を解説しているのですが、記事を作成する中で「古典文学に共通する『作品の選び方解説』の入門ページ」があったほうがよいのではないかと考えました。
実際、一般書や実用書を選んで読むのとはまた違った注意点が多いのも事実で、この記事ではそうした古典文学固有のポイントに絞って解説を加えてきます。
「これから古典に手を出してみよう!」という方にはオススメの記事になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
ちなみに、1ページ目は「作品」の選び方で、2ページ目は「作品のバージョン」の選び方を解説していますので、気になる項目だけ読んでいただいても問題ありません。
最初は作品の「読みやすさ」という点から選ぶべき
古典作品の選び方は無数に存在し、それに関しては現代における「エンタメ作品」の選び方のそれと全く変わりません。
ただし、これは「全く古典作品を読んだことがない」という初学者さん向けのお話になりますが、まず最初の一冊を選ぶ上ではとにかく「読みやすさ」に重点を置いた作品選びをされることをオススメします。
世界には「古典」と呼ばれる作品が無数に存在し、そのどれもが「名作」と称えられてきました。
しかし、そうとはいっても名作とされる古典作品が「読みやすい」かといえば決してそんなことはなく、むしろ「読みずらい」という感想を抱いてしまうことが少なくありません。
例えば、このサイトで紹介したところでいうと、ドストエフスキーの『罪と罰』やカミュの『異邦人』といった作品は、言うまでもなく名作ですが、決して読みやすくはありません。
それは宗教や思想的な面で教養を求められるということもそうですし、単純に文章そのものが読みずらいという面からもそう言えます。
そのため、前提として「古典としての名作」という評価が「読みやすさ」とイコールにはならない、ということを頭に入れておくべきです。
ただし、「古典的な名作」であり、さらに「読みやすい」という作品も数多く存在します。
このサイトで紹介したところでは、谷崎潤一郎の『痴人の愛』や、フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』などがそれにあたり、内容や文体共に現代文学と遜色ない感覚で読み進めていくことができるのです。
とはいっても、初学者の方がいきなり「読みやすい古典」を探し当てるのは困難でしょう。
そこで、私の独断と偏見に基づいて「読みやすい作品」である可能性が高いポイントをまとめてみました。
1.日本で言文一致運動(書き言葉と話し言葉を一致させようという運動。明治の初期頃の話)が起こってから書かれた作品
2.なるべく現代に近い時代に書かれた近現代の作品
3.作品紹介(文庫の裏表紙にある短文)の時点で「宗教色」「哲学色」が薄そうな作品
好きな作家や作品がリスペクトしている作品を選ぶべき
古典文学にトライしたいと思っている方の中には、「好きな作品に古典の話が出てきたから、元ネタを知りたい!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言えば、この探し方は非常に理にかなっているので、ぜひぜひ実行してみてください。
そもそも、現代の作家というものはほぼ必ず古典文学の影響を受けています。
そのため、大抵の作家には「元ネタ」ともいうべき作品や作家が存在し、彼らの作品もまた方向性として似たようなものである可能性は少なからず存在します。
ただし、これは何も「現代作家はパクってばっかり!」と言いたいわけではなく、創作活動に勤しむにはそもそもある程度先人の作品を知っておく必要があるためです。
古典を知ったうえで、それとなく影響を受けつつもそれを自覚して自分なりの世界観を作り上げている作家はごまんと存在します。
例えば、村上春樹はドストエフスキーやフィッツジェラルドの影響を公言していますし、池澤夏樹に至っては自分自身で世界文学全集を手掛けているほどです。
しかし、彼らのことを指して「古典をパクっているだけ!」となじる声は決して多数派ではないでしょう。(もちろんそういう批判もあるかもしれませんが)
むしろ、好きな作家の源泉を知るという意味で、古典の面からアプローチをかけてみることは非常に有効であるといえます。
私も当然そうした方向から作品を選ぶことは少なくありませんし、「次に読む本」が分からなくなってしまうことを防ぐ効果もあるでしょう。
「読みやすい作品」を手に取ってみることは重要ですが、「好きな作家に影響を与えた本」から手を出してみるのもおすすめですね。
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