星の王子さまの感想・考察(ネタバレ有)
ここからは、個人的に本作を読了したうえでの感想を書いていきたいと思います。
なお、記事の性質上この先はネタバレを多く含みますので、ご了承の上読み進めてください。
ツンデレ?悪女?興味深い「バラ」という女性
この作品のキーマンを挙げるとするならば、それは王子に旅を決意させた「バラ」という存在に他ならないでしょう。
かつて同じ星に暮らしていた時には、王子がバラに熱を上げそれをからかっていたのがバラでした。
しかし、その扱いに耐えかねた王子がバラに別れを告げると、とたんにしおらしくなったバラが別れを惜しむような言葉を投げかけてくるのです。
それでも星を出た王子が、旅を経てバラへの愛情を再確認する、というストーリーとも解釈できます。
このバラの態度は、普通に解釈すると「オーソドックスなツンデレ」というのがふさわしいでしょうか。
普段は王子にトゲを差して馬鹿にする一方で、心の底では彼を大切に思っている。素直じゃない彼女は、別れ際になって初めて本音を告げた、と。
しかし、個人的にはもう一つの解釈として「バラはとんでもない悪女である!」という可能性を指摘していたくなります。
考えてみてください。この物語というのはすべて「王子側」から語られた物語であり、バラの本音がどのようなものなのかは分からないのです。
これを踏まえてバラの視点から物語を読み解いていくと、こうした空恐ろしい解釈も可能になるわけです。
大して興味のない王子が熱心に私の世話をしてくれるので、非難しつつも都合よく彼を扱っていた。
しかし、いざ自分のもとを離れられるのは困ってしまうため、別れが差し迫った時だけ「気のあるフリ」をしてみた
ただ、やはり女性は恐ろしいところがありますから。男連中が思っているより彼女たちはずっと計算高い(賢いともいう)生き物なのでしょう。
そう考えていくと、この解釈も成立するのではないでしょうか。
最後の王子はやはり死んでバラを追いかけたと解釈したい
物語の終盤、飛行機が完成したボクはそれを王子に知らせようとします。
すると、王子はヘビと対話している最中であり、砂漠にやってきた原因は「ヘビに噛まれることで、心だけ惑星に帰る」ためだと語りました。
悲しむボクに対し、「私はあくまで星に帰るだけなのだから、星を見上げてボクが笑っていると思えばいい」と話す王子。そして、その言葉通り彼はヘビに噛まれて倒れるのでした。
この一連のシーンは、ボク本人の解釈である「王子が星に帰れたのだ」という見方も十分に成立し得ます。
言葉通り王子の言い分を信じればいいわけですし、うがった見方をしなければこちらを信じるべきかもしれません。
しかし、個人的には「星へ帰るため」という言葉は「ボクに希望を持たせるための優しいウソ」であり、彼はヘビに噛まれることで命を絶ったのだと考えました。
こう考えた理由としては
・もしかするとバラはもう枯れてしまったのではないか(星を出て世話をしていないため)
・王子自身は惑星を行き来することができる
このあたりが挙げられます。
いずれにしても、生死が明言されていない以上はあくまで想像の範疇を超えることはないため、皆さんも自分なりの解釈を楽しんでみてください。
終盤は心に響くが、惑星巡りはやや説教臭く感じるかも
これは1ページ目でも少し触れた点ですが、終盤のキツネとのやり取りが作品最大の見せ場となっています。
自分の感情を自覚していく王子と、それを諭すキツネとのやり取り。
ここは言うまでもなく本作を象徴するシーンです。
私としてもこの部分は好みなのですが、一方で終盤の「惑星巡り」をするシーンは、正直に言ってやや説教臭いと感じてしまいました。
それぞれの星に住んでいる人物が、人間の問題点を示していることは明らかです。
もちろん素直に「気をつけよう…」と思えばいいのでしょうが、個人的にはどうにも「道徳観」のようなものを説かれているような気分になってしまいました。
確かに正論を言っているのは分かっているのですが、どうにもこの部分が合いませんでしたね。
ただ、恐らく私のような偏屈者以外は気にならない欠点だと思いますので、素直に読めればそれがベストでしょう。
まとめ
ここまで、児童文学という体裁をとりながら多様な解釈が可能な『星の王子さま』という作品を紹介してきました。
明言されている部分が少ない分、人それぞれの解釈が成立し得ますので、ぜひ自分なりの読み方を見つけてみてください。
他の古典作品と比べても、断然読みやすいですしね!
ちなみに、本作を気に入った方は、神奈川県箱根市にある星の王子様ミュージアムを訪問されるとよいでしょう。
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