バラの「棘」にはご用心?星の王子さまのあらすじや感想、時代背景や名言解説!

星の王子さま アイキャッチ フランス近現代文学
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世の中に存在する文学作品の中には、その第一印象と大きく異なる「深み」を見せてくれるものがあります。

今回の記事で紹介する、サン=テグジュペリの児童文学小説『星の王子さま』もその一種でしょう。

挿絵や文体から子供に向けられた作品かと思いきや、注意深く読んでいくと大人の心にも深く刺さるようなメッセージが隠されているのです。

なお、1ページ目にはあらすじや作品情報・読み方などの解説文を、2ページ目には書評を掲載していますので、部分ごとに読んでいただいても構いません。

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星の王子様の作品紹介

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者 サン=テグジュペリ
執筆年 1943年
執筆国 フランス(出版国はアメリカ)
言語 英語・フランス語
ジャンル 児童文学
読解難度 かなり読みやすい
電子書籍化
青空文庫 ×
Kindle Unlimited読み放題
この作品は、飛行機乗りのサン=テグジュペリがナチスドイツによるパリ占領を受けて、亡命先のアメリカにて出版したものになります。

サン=テグジュペリ 写真サン=テグジュペリ(出典:Wikipedia)

したがって、アメリカで出版されたものの作品のくくりとしてはフランス文学に該当するという、やや複雑な出版過程を踏んでいるのです。

星の王子さまの簡単なあらすじ

飛行機の操縦士である「ぼく」は、機体トラブルにより砂漠への不時着を余儀なくされた。

過酷な環境下にありながら水は一週間分しか残されておらず、周囲に人影もないという事態に直面する。

「ぼく」が孤独な時間を過ごしていると、そこで一人の少年に出会う。

王子と名乗るその少年は、聞くところによるとある惑星から旅をしてこの地にたどり着いたらしい。

そこで、王子は少年に対して旅の過程で見聞きした様々な出来事を語っていくのであった…。

こんな人に読んでほしい

・読みやすくも奥深い作品を探している

・毎日を忙しく過ごす社会人

・童心に立ち返りたいと思っている

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星の王子さまの執筆背景・名言解説

この作品は、一見すると実に単純なストーリーになっているにもかかわらず、深く考えていくと含蓄のある様々なメッセージが読み取れることは先にもお話しました。

また、作者であるサン=テグジュペリの生涯と内容が密接にリンクしていることも重要なので、そのあたりの読解に役立ちそうな情報をお届けします。

作者サン=テグジュペリは飛行機乗りとして従軍していた

まず、この作品で主人公となる「ぼく」が、飛行機の操縦士として砂漠に不時着するというところから物語がスタートします。

これ自体は何の変哲もない導入かもしれませんが、この「飛行機乗り」という職業は、作者であるサン=テグジュペリの経験にも基づいているのです。

サン=テグジュペリ 搭乗機
彼の搭乗機(出典:Wikipedia)

彼は小説家として活動する以前、フランス陸軍でパイロットとしてのスキルを磨き、その後民間の航空会社に入るなど航空畑で活躍していました。

作家としてデビューしたのは1926年。彼が26歳の時で、やはり自身のパイロット経験に基づいた作品を多く執筆していました。

ただ、作家として活動する最中にもパイロットとして空を駆け回っており、作家として著名になる傍らでパイロットとしても知られるようになります。

1935年にはフランスーベトナム間の最短時間飛行記録に挑戦するものの、機体トラブルによってサハラ砂漠に不時着

当時はまだ飛行機開発の技術が未熟であり、パイロットが「自殺志願者」とも揶揄されるような時代でした。

それでも、最終的には奇跡的に徒歩で近隣都市のカイロへと生還しており、この時の経験をもとに執筆されたのが本作になるのです。

その後、第二次世界大戦の勃発に伴ってフランス軍に飛行教官として召集されましたが、生粋のパイロットである彼は「前線で飛行機に乗らせろ!」と言って聞きませんでした。

当時既に有名作家になっていたことや、パイロットの危険性から周囲にも猛反対されましたが、それでも前線へと飛び出していきます。

この時には何事もなく帰還できたものの、フランス本国がナチスドイツの支配下に入ったことで彼はアメリカへと亡命。

亡命先で出版されたのが『星の王子さま』であることは先にも書いた通りです。

アメリカの地で「自由フランス軍(要約すると、フランスをナチスから取り返そう!の会)」の空軍に志願すると、いくつかの作戦に従事した後、1944年の5月にフランス近郊で彼の飛行機は行方不明となります。

そして、サン=テグジュペリはそのまま帰らぬ人となったのでした。

戦で作家の命が奪われるのは痛ましい出来事ですが、彼に関してはこの撃墜以前にも飛行禁止処分を不服として猛抗議するなど、パイロットでいることをまさしく渇望していました。

そう考えていくと、戦場で死ぬことさえも本望だったのかもしれませんね…。

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数々の名言や解釈が分かれる深いメッセージが込められた作品

サン=テグジュペリの人生がつめ込まれたこの作品には、児童文学らしからぬ数多くの名言や解釈のし甲斐がある深いメッセージが含まれています。

まず、有名な名言としては、王子が出会ったキツネによって語られた

「大切なものは、目に見えないからね」

というものがあります。

これはこの作品を象徴するメッセージとして知られ、王子がかつて仲よくしていたバラと仲たがいして初めて分かった感情を表現したものであるのと同時に、現実を生きる我々にも深く突き刺さるものとなっています。

また、この言葉にはやや知名度で劣るものの、個人的には

「ボクは、あのバラのために色々なことをしてあげたんだ(要約)だって、ボクのバラだからね」

というボクの言葉と

「君がバラのために使った時間が長いほど、バラは君にとって大切な存在になるんだ」

というキツネの言葉の組み合わせが非常に好きです。

特に、このあたりの言葉は現実の恋愛にあてはめてみると非常に分かりやすいと思います。

私が男なので男目線の意見になってしまいますが、例えば「自分の恋人」が客観的に見て世界で一番魅力的な人物ということは、残念ながらほとんどの場合有り得ないことでしょう。

なぜなら、世界で一番の人間は世界に一人しかいないわけで、そこに自分のパートナーが選出されるのは限りなく難しいことです。

しかし、これが主観的な評価、つまり「自分にとって」ということになれば、話は大きく変わってきます。

自分の恋人が世界で一番魅力的だ!と思っている方は少なくないでしょうし、むしろそうであるべきとさえ思えます。

結局これは何故かというと、自分と相手との間には何物にも代えがたい時間や空間が共有されており、それを構築するための「労力(というと表現が悪いかも)」が相手への愛情を形作っているように思えるからです。

このように、本作には数々の名言とそこから派生する多様な解釈が可能な深みのある作品であることは間違いありません。

上記で挙げたような恋愛系の他にも、王子が訪れた惑星で見かけた

・体裁ばかり気にする王

・星の所有権を主張し勘定するビジネスマン

・自分の机を離れたことがない地理学者

など、現実でも覚えがちな違和感を極端に描くことでうまく児童文学の形に落とし込んでおり、笑いながら読んでいるとふとしたタイミングで「ハッ」とさせられるような構成をしています。

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翻訳が多数出版され作品解釈が分かれているが、まずは内藤訳から

この作品は世界中で大流行し、日本においても屈指の人気作品となっています。

訳本として有名なのは岩波書店から出ている内藤濯氏のもので、昔から訳書のスタンダードとして親しまれてきました。

ところが、本作は本文が単純であるがゆえに、2005年に岩波書店が翻訳権を失って以降は多数の訳本が一斉に登場するなど、彼の本以外を見かける機会も多いでしょう。

さらに、内藤氏がこの作品を「子どもの心を失った大人に向けて執筆された作品」と解釈し、それが一般に浸透していたことに対して、フランス文学家の塚崎幹夫氏から反論意見も登場するようになりました。

そこで出てきた主張によると、

・三本のバオバブの木を放置したために破滅した星→第二次世界大戦を引き起こした日・独・伊三国と、それを放置した国際社会の比喩

・ゾウを飲み込むウワバミの絵と消化にかかった時間→当時の弱肉強食思想と、軍事行動が起こった期間の比喩

・バラの花が四本で棘が四本→フランスをめぐる危機の数と一致

という内容から、「戦争を皮肉ったプロパガンダ作品」という性質があったと指摘されています。

実際、サン=テグジュペリの経歴や時代を考えればこれらのメッセージが込められていたというのは無視できるものでもなく、私としてはどちらの意味もあったと解釈しています。

つまり、この作品は

戦争を引き起こした敵国を揶揄しつつ、同時にそうした世界を作り出してしまった大人たちを童心に立ち返らせることを目的とした作品

だったのではないか、と思います。

したがって、上記のように解釈によって非常に深い作品たり得るがゆえに、翻訳一つとっても意見が分かれる作品なのです。

様々な訳書が世に出ていますが、個人的にはまず内藤訳を読むべきだと思います。学術的に研究するならば話は別ですけどね。

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