『モンテ・クリスト伯』のあらすじや感想、時代背景を解説!「巌窟王」の名で日本でも親しまれた新聞小説

モンテ・クリスト伯 アイキャッチフランス近現代文学
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モンテ・クリスト伯の感想・考察(ネタバレ有)

ここからは、本作に関する考察を含めた感想を述べていきたいと思います。

なお、記事の構成上多くのネタバレを含みますので、その点はご了承ください。

読み心地はまるで少年漫画!推しキャラを作るという楽しみかたも

古典文学作品として知られる『モンテ・クリスト伯』。時代設定は1800年代ですが、ストーリー自体には全く古さを感じません。

「主人公が苦難を乗り越え、修行をし、超人的な力を得て悪者をこらしめる」という流れは、まるで少年漫画のようで、現代の多くの物語に通ずるものがあります。

また、会話が多めの構成になっていること、情景の描写もナレーションのようでわかりやすいことも特徴。読みながら状況をイメージしやすく、そのシーンを実際に目にしているような気分になります。

説明的な内容も多くありますが、会話の中に組み込むことで理解しやすくなっています。文字が多めの漫画をすらすら読めるような人なら、苦労せず読み進められるでしょう。

さらに、主要な登場人物の多い群像劇であるというのも、少年漫画に近いと感じた点です。漫画を読むときのように、登場人物の中から自分の推しキャラを見つけるとより楽しめます。ちなみにわたしの推しキャラはファリア司祭です。

ミステリ小説好きにはたまらない!現代のミステリ小説につながる要素が満載!

現代のサスペンス・ミステリ小説のはしりとも言われている本作。随所にそれを感じさせるシーンが登場しています。

例えば、前半に登場する獄中でのファリア司祭の名推理シーン。

ファリア司祭はダンテスから話を聞いただけで、ダンテスが誰にどのように陥れられたのかを見抜いてしまいます。それはまるで、シャーロック・ホームズやアガサ・クリスティーの作品に登場するミス・マープルのよう。いわゆる安楽椅子探偵ですね。

また、物語全体に倒叙ミステリ的要素も盛り込まれています。つまり、前半の謀略についても後半の復讐についても、「読者は先に首謀者を知っている」という手法が取られているのです。

裏で誰が糸を引いているのかというのをすべて知りながら読み進めるわけですが、これがおもしろい。特に後半の復讐編で、一見何のつながりもなさそうな出来事が見事につながって復讐という形になっていく過程は、ゾクゾクして読みごたえ抜群です。

さらに物語のベースにあるサスペンス要素、脱獄シーンのアクション要素など、現代のミステリ小説につながるあらゆる要素が盛り込まれています。ミステリ好きとしては終始ワクワクが止まらない作品です。

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美食家デュマの描く、食事シーンの効果的な使い方にも注目!

作者は美食家としても知られ、晩年に料理大辞典まで執筆していることは前半で少し触れました。そんなデュマ・ペールの描く作中の食事シーンは、食べ物自体の描写がすばらしいだけではなく、実に象徴的な役割を果たしています。

共通しているのは「食べないこと=拒絶すること」という描き方です。

獄中でダンテスは自殺の手段として「餓死」を選択します。生きることを拒絶し、とにかくひたすら食べません。ちなみにダンテスの父親は息子が獄中にいる間に絶望のうちに亡くなってしまうのですが、その死因もやはり「餓死」でした。

しかし、ダンテスは獄中でファリア司祭の存在を知るなり、一転食事を再開します。希望を取り戻し、生きることを決意したダンテスを象徴するシーンです。獄中のひどい食事ではありますが、わたしは作中で一番おいしそうな食事だと感じました。

復讐編でモンテ・クリスト伯となったダンテスは、人前ではあまり食べなくなります。特に仇敵の一人から舞踏会に招かれた時には、まったく食べ物に手をつけようとしませんでした。

「相手の差し出す食べ物を断る」という行為により、はっきりとした拒絶を示すシーンで、ダンテスの確固たる決意が怖いほどに伝わってきます。

このような食事シーンをたびたび登場させることで、読者が登場人物の気持ちを感覚的に理解しやすくなっていると思います。

登場人物に学ぶ!ドロドロした感情や不幸との向き合いかた

物語が嫉妬心からスタートする作品なだけに、作中には人間のドロドロした感情がストレートに描かれています。そうしたさまざまな感情が、登場人物たちに行動を促すことになるわけですが、その際必ず選択肢が用意されています。

たとえば、ダングラールとフェルナンの2人が偽の密告状を作るシーンでも、「密告状を出さない」という選択肢が与えられています。また、主人公のダンテスについても脱獄後に、「復讐はせず、新たな人生を歩む」という選択肢がありました。

いずれの人物もドロドロした感情の促す道を選択し、それが悲しみや憎しみの連鎖につながっていきます。

しかし、そうした登場人物たちの中にあって、一人異質な存在といえるのがダンテスの囚人仲間のファリア司祭。彼は10年以上囚われの身でありながら、暗い牢獄の中で生活に必要なものを自ら作り、勉強をしたり、論文を書いたり、脱獄の計画を立てたりしていました。

その能力の高さにダンテスは「あなたは囚われていなければ、きっとすごいことを成し遂げただろう」と司祭に言います。しかし司祭は「囚われていなければくだらないことしかできなかっただろう。囚われるという不幸が自分の能力を発揮させたのだ」と即座に言い切るのです。これを獄中で言っているわけですから、本当にすごいですよね。

ドロドロした感情を乗り越えて、自分の人生を受け入れていくという選択をしたファリア司祭の姿には、自分の人生を省みて考えさせるものがありました。

作中にはほかにも、「不幸」や「復讐」についての捉え方を改めて考えさせるような、セリフやシーンが登場しています。自分の中で答えを探しながら読んでいくのもおもしろいのではないでしょうか。

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まとめ

『モンテ・クリスト伯』は、古典ながらエンタメの要素が強く、文学作品を読みなれていない人にも読みやすい作品です。

少年漫画のようなストーリーにミステリの要素が盛り込まれ、さまざまな登場人物たちが織りなす群像劇や感情の動きも読みどころとなっています。

長編だからとあきらめず、ぜひフランス文学の棚で完訳版をゲットし、その魅力を存分に味わってみてください。

※物語の人物名や固有名詞の表記は、「モンテ・クリスト伯(山内義雄訳/岩波文庫/2007年改版)」を参考にしました。

【参考文献】

・モンテ・クリスト伯(一~七)(山内義雄訳/岩波文庫/2007年改版)

・アレクサンドル・デュマ 人と思想139(辻昶・稲垣直樹著/清水書院/2016年新装版)

・図説 フランスの歴史(佐々木真著/河出書房新社/2015年)

・100分de名著 デュマ モンテ・クリスト伯(佐藤賢一著/NHK出版/2013年)

・名作から創るフランス料理(小倉和夫著/かまくら春秋社/2010年)

・デュマの大料理事典(辻静雄・林田遼右・坂東三郎訳/岩波書店/2002年)

【参考ウェブサイト】

・ウィキペディア内「黒岩涙香」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E5%B2%A9%E6%B6%99%E9%A6%99

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