ハードボイルド小説の始祖!『ロング・グッドバイ(長いお別れ)』のあらすじや感想、名言解説

ロンググッドバイ アイキャッチ アメリカ近現代文学
スポンサーリンク
スポンサーリンク

皆さんも「ハードボイルド」という言葉には聞き覚えがあるでしょう。

この言葉を分かりやすく表現すると「渋い漢」を意味しており、文学の世界においては強い意志を持った人物を簡潔に描くことを指します。

今回は、世間にも広く知られる「ハードボイルド」という概念を確立したことで名高い、レイモンド・チャンドラーの傑作『ロンググッドバイ(長いお別れ)』を紹介していきます。

なお、1ページ目で執筆背景や作品情報の解説を、2ページ目で作品のあらすじやネタバレを含む感想を述べていきますので、よろしくお願いします。

スポンサーリンク

ロンググッドバイ(長いお別れ)の作品紹介

まず、本作に関する基本的な作品情報を整理しておきます。

作者 レイモンド・チャンドラー
執筆年 1953年
執筆国 アメリカ
言語 英語
ジャンル 推理小説
読解難度 読みやすい
電子書籍化
青空文庫 ×
Kindle Unlimited読み放題 ×
この作品に見られる最大の特徴は、なんといっても主人公フィリップ・マーロウの行動や言動が「渋い」ことです。
それゆえに、小説の一キャラクターでありながら彼の人気は非常に高く、世界中の探偵や警察官という職業イメージを変えるほどに人気を博しました。
実際、我々が抱きがちな「デカ(刑事)」「トレンチコートを羽織った寡黙な漢」というような印象は、本作を含めたチャンドラーの影響と言っても差し支えありません。

ロンググッドバイ(長いお別れ)のあらすじ

私立探偵として事件の捜査にあたっていたフィリップ・マーロウは、ある夜泥酔している「スカーフェイス」の男、テリー・レノックスと出会う。

レノックスは決して特筆すべきものをもっているわけではなかったが、人柄に好感を抱いたマーロウはバーでの交流を通じて彼と友人になっていった。

しかし、彼と知り合ってから時間がたったある日、深夜にマーロウの自宅を訪れた彼から「メキシコへ連れて行ってほしい」という依頼を受ける。

明らかに異常な申し出であったが、レノックスの事情を詮索しなかったマーロウは指示通りの地へと彼を送りとどけた。

こうして一仕事を終えて帰国したマーロウを待ち受けていたのは、妻を殺した容疑に懸けられたレノックスの共犯者という扱いであった。

友人の行いをかばって黙秘を貫いたマーロウ。しかし、数日後にレノックスが自殺したという知らせが入り、彼は釈放される。

レノックスは本当に妻殺しの犯人であったのか。真相を確かめるべくマーロウは独り捜査に乗り出した——。

こんな人に読んでほしい

・渋い男に憧れている男性

・オジサマ好きの女性

・お酒を飲むのが好きである

スポンサーリンク

ロンググッドバイ(長いお別れ)の評価・名言解説

チャンドラーチャンドラー(出典:Amazon)

次に、本作の評価や名言の解説を行っていきます。

この作品は読むのに特段の予備知識を必要とする作品ではないので、その分後世に与えた影響やハードボイルドという概念の説明に注力していきますね。

ハードボイルドという概念の定着に大きな影響を与えた

まず、先ほどから何度も触れているように、本作は「ハードボイルド」が全面に表現されている作品です。

私立探偵フィリップ・マーロウの行動や言動は、その一つ一つが「男の憧れる男」を体現しており、彼の振舞いをマネしたいと考えた読者は世界中に存在するでしょう。

この描写が読者に大きくウケたこともあり、ハードボイルドの概念が完全に確立していきました。

ただし、このハードボイルドという作風自体は彼だけが編み出したものではなく、彼も寄稿していたアメリカの『ブラック・マスク』という雑誌に掲載された作品全体がそうした傾向を持っていました。

また、基本的にこの概念はミステリ・推理小説の文脈から生じてきたものであり、その後のジャンル傾向を確立させたといっても過言ではありません。

この流行は1960年代の後半ごろまで同ジャンルの定型として流行し続けましたが、それ以降は推理小説もハードボイルドの枠組みを脱し、新たなジャンルへと移行していきました。

しかし、今なお「ハードボイルド」というスタイルには一定の支持があり、現代でも日本においては石田衣良や誉田哲也などの作家が同スタイルを取り入れた作品を世に送り出しています。

スポンサーリンク

マーロウを主人公とする長編小説としては第6作にあたる

チャンドラーが執筆した長編小説には、基本的に探偵役としてフィリップ・マーロウが姿を見せます。

フィリップマーロウ ハンフリーボガート映画『三つ数えろ』でマーロウを演じるハンフリー・ボガート(出典:Wikipedia)

主人公を同じくしているということで、彼の長編小説は「シリーズもの」ともみなされるのです。

そうした観点でチャンドラーの著作を眺めていくと、処女作の『大いなる眠り』を一作目とした場合、この作品は六作目に相当します。

最終的に彼は全七作の長編小説を手掛けることになるのですが、チャンドラーファンの評価では『ロンググッドバイ』が一番の支持を集めており、彼の魅力を味わうのであればまずこの作品に挑戦してみることをオススメします。

シリーズものとはいっても内容や展開に繋がりはなく、本作から読み始めても全く問題はありません。

ちなみに、本作以外で広く支持を集めるチャンドラーの小説は、『大いなる眠り』『さらば愛しき女よ』という作品で、こちらから読み始めても大丈夫です。

また、彼の著作が気に入った場合は同じくハードボイルドを志向したダシール・ハメットが描いた『マルタの鷹』あたりに手を出してみると幸せな気持ちになれるかも。

スポンサーリンク

「ギムレットを飲むには早すぎる」に代表される名言の多さ

先ほどから度々ハードボイルドな作風に触れている通り、本作の魅力は言うまでもなく硬派でキザな世界観にあります。

推理小説としてトリックや展開を見てみると、致命的な矛盾や稚拙さがあるというところまではいかないものの、犯人や展開も全く予測がつかないというほどではありません。

したがって、単純なミステリ面だけを追求すれば他に良質な作品はいくらでもあるでしょう。

しかし、それらの作品を凌駕するようなポイントが「ハードボイルド」なのであり、良くも悪くもこの部分を好きになれるかどうかが作品の評価を左右します。

特に、作中で登場人物たちが発する名言は本当に素晴らしく、男の身ながら思わず惚れそうになってしまうほどです。

著名なセリフもいくつか存在し、作品の終盤で発される

「ギムレットを飲むには早すぎる」

「さよならを言うのはわずかの間死ぬことだ」

という名言は広く流行しました。

場面そのものに言及するとガッツリネタバレになってしまうので多くを語れないのが残念ですが(2ページ目でネタバレ解説もしています)、男が惚れる男の生きざまを是非とも味わっていただきたいところです!

※続きは次のページへ

スポンサーリンク

コメント