「斜陽族」を描いた滅びの文学!太宰治『斜陽』のあらすじや感想、解説・考察

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斜陽の感想・考察(ネタバレ有)

ここからは、個人的に本作を読了したうえでの感想を書いていきたいと思います。

なお、記事の性質上この先はネタバレを多く含みますので、ご了承の上読み進めてください。

「滅びの美学」を存分に味わうことができる

そもそも、『斜陽』の元ネタとなった『桜の園』も好きであり、昔から「没落の文学」に目がなかった私としてはこの本を気に入らない理由がないのでした。

本音を言ってしまえば、他の太宰の作品は「俺って駄目なんだよなぁ…」と言いつつも心の底では自尊心を膨らませていそうな印象を抱いてしまい、それほど好みではありません。

しかし、この作品は自分ではなく他人をモデルにしているからか、非常に美しい世界観を構築することに成功しています。

高潔な心を抱いているが、気高さだけでは生きていけない。

彼が津島家の没落に際して味わった苦しみや悲しみが一挙に伝わってくるようです。

このあたりは物語の前半部分で特に強く表現されており、個人的には前半部が非常に好みの対象になりました。

彼女の誇りが、まるで小さな針で刺されるように少しずつ、しかし着実に傷つけられていく様には、本当に得も言われぬ感傷を抱くものです。

「恥を知らない私」はかず子の母親に憧れる

私がこの物語で一番印象に残っているのは、かず子の母親にあたる人物の振舞いです。

彼女はかず子をして「本当に貴族的な女性」と評されており、没落していく中でもその姿勢が崩れることはありません。

かず子は農業や物の売却などで貴族らしからぬ生活にも徐々に適応していきますが、母はそうではありませんでした。

柔らかい物腰の中にも頑として貴族らしさを忘れることなく、それゆえに社会との折り合いをつけられず立場を悪くしていきます。

私は、そんな彼女の振舞いをこの上ない憧れの目線で眺めていました。

その理由として大きなものが、自分自身にプライドや誇りがほとんどないことに原因があると自己分析しています。

世の中の人物を理想主義者と現実主義者に大別するならば、私は間違いなく後者に分類されます。

そのため、良くも悪くも「自分が充実した生活を送るため」ならば、恥やプライドを容易に捨てられるのです。

分かりやすく言えば、「明日の食事のために貴族の靴を舐めることができる」そういう人間と言い換えられるでしょう。

だからこそ、「生きるため」という目前に迫った課題を前にしても、「自分らしさ」を曲げないかず子の母親には憧れの念を抱きます。

確かに、彼女の振舞いは現実が見えていない愚かなもので、万人に褒められるものではないかもしれません。

しかし、高潔さを貫くことのできるほどの「信念」を抱いたその様子が、私には本当に眩しく見えるのでした。

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終盤の恋愛重視な展開はいま一つ…

ここまで、本作がいかにして「滅び」の美しさを描いてきたか、ということを中心に書評を行ってきました。

しかし、その一面が強く出ているのは物語の前半までで、後半部に関しては作風がやや変わっているという点に注目しなければなりません。

物語終盤では、弟の直治が転がり込んだ上原二郎という小説家とかず子の恋愛模様が大きな割合を占めるようになります。

かず子は数年間会ってもいなかった彼の家に乗り込み、そこで彼からの愛を確かめるのでした。

しかし、直治が自殺してしまったことで上原も含めた周囲の人々が彼女から距離を取るようになり、彼の子を宿したかず子はシングルマザーとして時代に抗って生きていくことを決める、というフィナーレを迎えます。

この展開は、率直に言ってあまり好きにはなれませんでした。

確かに、かず子が片田舎で腐っていくことに怯え、「誰か」から必要とされることに飢えていたのは理解できます。

それがある時は上原であり、ある時は子どもであったのでしょう。

とはいえ、現代の価値観から考えて、女性の生きがいを「男や子供」と表現されるとフェミニストではない私でも「う~ん…」と唸ってしまいます。

もちろん、当時としてはシングルマザーとして一人子を育てることが「革命的決意」であったことは十分にわかっているのです。

ただ、そうはいっても単純に救いがないですし、「言いたいことはわかるけど、モヤモヤする…」というのが正直な感想です。

そのため、終盤の展開に関しては好みがわかれるところかもしれません…。

ちなみに、最後がこのような展開になったのは、かず子のモデルになった静子が妊娠したためだとされています。

確かに、日本において『桜の園』をなぞっていたようなストーリーラインが突如として脱線しているので、太宰としても納得のいく展開ではなかったのかもしれませんね。

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まとめ

ここまで、『斜陽』という作品の紹介や解説を行ってきました。

終盤の展開にはやや不満が残るものの、『桜の園』をベースに日本的な「滅び」を描いた部分には一見の価値があるでしょう。

ちょうど太宰治生誕111周年にあたる2020年度には『斜陽』の映画公開も予定されているとのことですので、この機会にぜひ読んでみてください。

青空文庫のものでも十分に理解できると思います!

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