『平家物語』のあらすじや特徴、内容をわかりやすく解説!鎌倉時代の歴史的軍記物

平家物語 アイキャッチ 日本文学
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祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり——。

この物語の名を知らずとも、書き出しは聞き覚えがあるという方も少なくないでしょう。

本日解説するのは、恐らく日本で最も「暗記」されているであろう古典文学『平家物語』です。

作品の知名度は抜群な一方、教科書に掲載されている以外の部分を能動的に読む機会は少ないかもしれませんね。

そこで、この記事では『平家物語』に関する様々な項目を取り上げ、皆さんにも身近に感じていただけるような内容を紹介していきます。

なお、この記事では1ページ目にあらすじや作品情報・トリビアといった解説文を、2ページ目は書評(ネタバレ多め)を掲載していますので、部分ごとに読んでいただいても大丈夫です。

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平家物語の作者や成立年代

教科書や資料集などにも掲載されており記憶に新しいという方もいらっしゃるかもしれませんが、まずここでは平家物語の基本情報を整理しておきます。

作者 信濃前司行長?
執筆年 1221年以降?
執筆国 日本
言語 日本語・漢語(和漢混合文)
ジャンル 軍記物
読解難度 やや読みにくい
電子書籍化
青空文庫 ×
Kindle Unlimited読み放題
見ていただければ分かるように、古典文学ゆえの不明な点も数多く存在します。そのあたりの研究動向についても下記でまとめていくつもりです。

平家物語の簡単なあらすじ

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり——。

平安時代の後期になって、社会には「侍」という立場の人物たちが登場するようになりました。

彼らは権力を手中に収めていた天皇家や貴族らの寵愛を受け勢力を伸ばし、いつしか政治的にも軍事的にも欠かせない存在へと成長していったのです。

その中でも頭角を現したのが、桓武天皇以来の発祥を掲げた「平氏」と清和天皇以来の発祥を掲げた「源氏」でした。

彼らはしのぎを削って覇権を争いましたが、最初にそれを制したのは平氏の長・平清盛。

平氏は栄華を極め、「平氏にあらずんば人にあらず」と自称するまでの勢力に成長していたのです。

しかし、臥薪嘗胆の日々を送る源氏の中には、父の無念を晴らさんとする二人の兄弟がいました。

彼らの成長と共に平氏の没落が始まるとは、いったい誰が予想したことでしょうか。

こんな人に読んでほしい

・小中学校で暗記をさせられた記憶がある

・美しいまでの没落に興味がある

・古文の授業が好きだった

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平家物語の作者・特徴・読み方・時代背景の解説

平家物語絵巻『平家物語絵巻』(出典:沖縄市HP)

この平家物語という作品はかなりの歴史の深さを誇るゆえに、語るべきトリビアや解説は数多く存在します。

加えて読み方にも一工夫を講じた方がよいことなどから、普段の記事よりもこの部分に力を入れて解説していきますね。

世の無常を描き出した軍記物の最高峰

まず、冒頭でも示した書き出しからも読み取れるように、本作のテーマは「平家の栄光と没落を追うことで、世の無常を描きだす」というものです。

歴史の教科書などでもご存知のように、平清盛をはじめとして急速に力をつけていった平氏は、その没落もまた急速なものでした。

この歴史的な展開を踏まえて、作者が感じた「無常観」が、作風にも存分に現れています。

実際、本作以降の「軍記物(戦や武士の様子が描かれた文学)」を見てみても、これほどに後ろ向きな作品はなかなか珍しいものがあるくらいです。

しかし、その分だけ「滅びの美学」というものがこれでもかというほど魅力的に描かれており、「ハッピーエンドはもうこりごりだ」という方は今読んでも絶対に満足できると思います。

平氏の栄光と没落の儚さと美しさをぜひとも体感していただきたいところです。

作者や成立年代はおおよそ判明しているのみ

実に1000年近い期間語り継がれてきた作品ではありますが、その作者や成立年代は確定していないことをご存知でしょうか。

作者として有力なのは信濃前司行長という鎌倉初期の貴族で、これは同じく偉大な古典作品の『徒然草』にそう書かれているというのが根拠になっています。

ただし、本作は「琵琶法師」と呼ばれる人々によって語り継がれてきた「平曲(語り物)」という側面があり、現在我々が知っている平家物語が本当に行長のオリジナル作品であるかどうかは謎のままです。

琵琶法師琵琶法師(出典:Wikipedia)

また、作者が明言されていないことから成立年代も不詳になっており、内容的に見て鎌倉初期の1221年ごろには前半3巻分が成立していたという見方もなされますが、こちらもハッキリとしたところは分かっていません。

ちなみに、我々の時代に伝わっている平家物語は12巻の形をとるものですが、異本として6巻本や48巻本などさまざまなバージョンが存在するようです。

この12巻という形自体は13世紀中ごろに完成したものであると見なされており、さらに江戸時代に入って追加された灌頂(かんぢょう:菩薩が仏になる時、頭に水を被るという証明儀式のこと)巻というものを足した全13巻が現代でよく知られる一般的な形になります。

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読むなら平安後期の習俗を予習あるいは確認しながらがよい

本作を読むにあたっては、恐らく大半の方が現代語訳のものを手にするでしょう。

そうなると言葉の壁そのものは取り払われることになるのですが、懸念点としてはそもそも「単語」そのものがよくわからない、あるいは登場人物のとる「行動」の意味がよくわからない、といったあたりでしょうか。

やはり、そういった「専門用語」「価値観」のようなものを押さえておかなければ感動が半減してしまいますので、出来ることなら「高校日本史」程度の予備知識は持っておくに越したことはありません。

ただし、今はインターネットを気軽に扱える時代ですから、分からないことがあればスマホで検索すれば大方は解決するでしょう。

さらに、超初心者でも読めるように丁寧な訳をつけていらっしゃるサイトさんもあると思うので、あまり身構える必要はないと思います。

必要なのは、「読もう!」という決断をするか否かです!

大長編なのでエピソード単位で読むのもアリ

読み始めてしまえば意外とすんなり世界に入れる作品ではありますが、なんと言っても長編小説ですから、頭から読破するにはそれなりの時間を要します。

読書慣れしていない方はいきなり全てを読もうとしてしまうと挫折する可能性も少なくありませんので、私としては「まずエピソード単位で読んでみる」というのもアリだと思います。

これはどういうことかというと、例えば

・「祇園精舎」の書き出しだけとりあえず読んでみる

・「那須与一」や「実盛」といった有名どころをまず読んでみる

・「木曽義仲」や「源義経」など気になる人物を追いかけてみる

などの読み方です。

平家物語は確かに一本の物語という構成をしている一方で、ある部分を読まなければ他の部分が全く分からないということはありません。

そのため、多少強引ではありますが気になったトピックだけまとめ読みするのも十分に可能です。

そうすれば短編小説のような分量になりますし、試し読みのような感覚で気に入ったら通読にトライしてみるといいのかもしれませんね。

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「歴史の事実が書いてある」とは思わない方が良い

これは少し専門的な解説になってしまいますが、本作は「歴史書」ではなく、あくまで「物語」であることに注意しなければなりません。

確かに歴史の流れを踏まえて描かれている作品なので、大枠は史実といっても過言ではないと思います。

しかし、夢を壊すようで申し訳ないのですが、自分たちの命がかかっている戦場での出来事が作中で描かれているほど鮮明に記録されている可能性は限りなくゼロに等しいでしょう。

そのため、先ほど挙げたような那須与一や実盛のエピソードを踏まえて「昔の武士は戦場でこんなことをしていたのか!」と思ってしまうと、いつか歴史の勉強をしようと思ったときにショックを受けてしまうと思いますので…。

とはいえ、それが物語の面白さを損なうわけではありません。フィクションにはフィクションの良さがあるからですね。

誰も「遠い昔、はるかかなたの銀河系で…」と言われて、「スターウォーズは嘘をついている!」とは思わないのと一緒です。

※続きは次ページへ

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